ワールドカップ予選のインドとの試合で日本が大量得点をあげたら、いろんなところが沸き立った。6月9日、埼玉スタジアムのスタンドは1点ごとに歓声でゆれ、テレビも興奮し、翌日のスポーツ新聞は1面トップで「日本ゴールラッシュ」と大見出しをつけた。
でも、ぼくは、ちょっと心配だ。というのは、大量得点をすると、その後がよくない例も、これまで何度も見てきているからである。
大量得点が今後、得失点差などで利いてくる場合があるかもしれない。だから7−0の勝利はいいのだが、今回のワールドカップ予選でだいじなのは、一つひとつ勝っていくことである。1−0もいい。まず勝つことである。
得点の大差が、そのまま実力の差とは限らない。同じ相手と別の機会に対戦して0−1で負けることもある。相手が守りに守って頑張るのを攻め崩せないでいるうちに、なにかの拍子で逆襲の1発を食らうというような経験をしたチームもたくさんある。
今回の試合も、インドは守りを固めるつもりだっただろう。しかし前半12分に日本が早ばやと先制点をあげたので、インドは守ってばかりいるわけには、いかなくなった。そこへまた、次つぎと追加点が入ったのでインドは戦意が衰えた。それが大量点の原因である。
キックオフの直後にインドのベンカティシュが意表をついたミドルシュートを放ち、ゴールキーパーの川口がはじき出した。あれが入っていたらまた別の展開になったに違いない。
ワールドカップの1次リーグで優勝候補が苦戦することがある。初戦を落としたり、0−0、0−0、1−0でかろうじて勝ち進んだりする。そういうチームが結局は優勝したりする。
長丁場の大会だから、優勝を狙うチームは、はじめのうちは力を温存し、決勝戦にむけて調子をあげていく。あるいは最初から手の内をさらけ出さないようにする。
1次リーグで圧勝したチームは案外、次の段階で脱落する。そういう例を、いくつも見てきているから、大量点がかえって心配になるわけである。
「本番のワールドカップの優勝候補とアジア予選の日本は違うよ」と言われれば、それはそうだとは思う。
でも、マスコミが試合の内容をきびしく吟味しないで、大量得点という結果だけを、あおりたてるのは感心できない。
ただし、埼玉スタジアムのスタンドがゴールのたびに大歓声で沸き立つのは、それはそれでいい。これは、サッカーの楽しみである。
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