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サッカーマガジン 2004年6月8日号
ビバ!サッカー

オランダに学ぶコーチ育成

 オランダの「コーチ学」が注目されている。日本の若者もコーチ留学し、オランダ・サッカー協会の2級の資格をとって、すでに日本で現場に立っている人もいる。現在も3人は留学中だそうだ。その一人、林雅人(はやし・まさと)さんの話を聞いたので紹介したい。林さんはオランダに渡って4年目。26歳だが、あと1年は研修を続けて1級のライセンスをめざすという。
 林さんはアーリ・スカンズさんの紹介で留学した。スカンズさんは、現在は大分トリニータのフィジカル・コーチをしていて「サッカーマガジン」5月11日号(972号)に紹介されている。
 スカンズさんが日本体育大学のヘッドコーチだったとき林さんは学生だった。4年間にわたって指導を受け「これがサッカーのコーチなんだ」と目からウロコが落ちた。「いままでは、ほんとのサッカーの指導を受けていなかったんだ」とさえ思ったという。
 語学学校でオランダ語を勉強しながら地元フェーネンダールのアマチュアチームに加わり得点王にもなった。コーチとしては、フィテッセのユース・アカデミーで研修した。
 オランダで研修をうけ、じっさいにユースの選手たちを指導してみて、さらにいくつものウロコが落ちた。
 練習が実戦的であること。実際の試合のような練習のなかで指導する。練習時間も90分で区切られている。
 指導は個人ごとに分析して、その個人に合わせて、きめこまかいこと。一人ひとりのカルテも作られている。
 コーチ研修がきびしいこと。練りに練った指導プランを、みなの前で破り捨てられたこともある。
 すぐれた指導者には風格(オーラ)があること。名選手だったとか、コーチの肩書きがあるとか、そういうことだけでは子どもたちでもついてこない。
 次から次へと、すべてが新しい経験だった。日本に比べると、施設も違う。考え方も違う。そして何よりも、指導者育成についての組織が違う。
 林さんは、日本に帰ったら、単にチームのコーチをめざすだけでなく、指導者育成の方法や組織についてオランダで学んだことを生かしたいと希望している。
 ところで、この話は、ぼく自身が聞いたものではない。
 読売・日本テレビ文化センター北千住で開いている「ビバ!サッカー講座」の仲間の中川桜さんが春休みに欧州に出掛けて取材してきたものである。
 ぼくの主宰するこの講座は、このように活動は手広く、底辺にもトップにも目配りがきいているのが自慢である。


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