東京ヴェルディの森本貴幸が、Jリーグ最年少ゴール記録を塗り替えた。15歳11カ月と28日。味の素スタジアムで5月5日の「こどもの日」に行なわれたジェフ市原との試合である。
このゴールでは、森本のストライカーとしての戦術能力が称賛されている。簡単に説明するとこうである。
ボールが右サイドで小林慶行に渡った。そのとき森本はゴール正面のやや左に位置していた。ボールが小林慶に渡った瞬間に森本は外側に向けて、ちょっと動いた。マークしていたジェフのディフェンダーの茶野はつられて外側に動いた。
小林慶がボールを蹴る瞬間に森本は反転して内側にダッシュした。そこへ小林慶からのクロスがぴたりとあって、ヘディングシュートがみごとに決まった。
森本の最初の動きに、ジェフの茶野がつられ、そのために、もうひとりのディフェンダーのミリノビッチとの間が門のように開いた。そういう状況を作り出したのが戦術能力だというわけである。
小林慶の的確なクロスが、森本の狙いを生かした。「蹴る瞬間に、森本が外に動くのが見えたので(実際は)内側に出るなと思った」と小林慶は話している。2人のイメージがぴたりと合ったわけである。
ここで知りたいのは、26歳の小林慶に合わせてもらうことのできるような15歳の戦術能力が、どのようにして育ったのかということである。
テクニックを生み出す神経系は12歳ぐらいまでに発達するという。身体を動かす方法の配線が脳のなかに完成するのである。その後は、完成した配線を組み合せて、さらに技能を伸ばすことになる。
身体の成長は男子では15〜16歳くらいで止まる。身長の伸びが止まったときは骨が固まっているから、この年代からは強い筋力トレーニングなどで身体作りをはじめることができる。
そういう話は聞いたことがあるのだが、サッカーの戦術能力、つまり「インテリジェンス」は、どの年代で、どういうふうにして育つのだろうか。
森本を見て考えた。「戦術能力も、幼いころから脳のなかに蓄積されていて、それが14〜15歳ごろから外に出始めるのではないだろうか」
森本は初ゴールを決めたあと「バティステュータのゴールです」と言ったという。アルゼンチンのバティステュータのゴールをビデオで見たに違いない。それが脳内にイメージとして蓄積され、利用できる状態になっていたに違いない。
そうであれば、子どもたちにテレビで、いろいろな試合を見てもらえるようにすることが、とても大切である。 |