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サッカーマガジン 2004年3月30日号
ビバ!サッカー

最後の10分を決めたもの

 アテネ・オリンピックの出場権を争うアジア最終予選、第1ラウンドのUAEシリーズ最終戦で、U−23日本代表は地元のUAE(アラブ首長国連邦)に2−0で勝って首位で折り返した。これで第2ラウンドの日本シリーズは、かなり有利になった。ま、勝てばいいや。勝てばいいんだよ。
 でも、かなり苦しかったね。
 3月5日にアブダビで行なわれたこの試合。UAEが得点してもおかしくない場面が何度もあった。0−0の引き分けに終わっても、まあ、よしとしなければならない試合内容といえるかもしれない。
 ところが残り10分にUAEのスタミナが切れ、日本が最後のがんばりを生かして後半39分と42分に2点をあげて振り切った。「最後は精神力」と山本昌邦監督は言ったという。マスコミでも「精神力の勝利だ」という褒め言葉が使われていた。
 「精神力の勝利」という表現が間違っているというつもりはないが、でも最後の10分間にUAEが力尽き、日本がそれを鋭くつくことができたのを「気持ちの問題」にしてしまうのは、ちょっと単純すぎるように思う。
 UAEには地元の利がある。第1戦、第2戦に連勝して意気もあがっている。第2戦ではメンバーの一部を休ませることもできた。体調はよかったに違いない。
 一方の日本は、第1戦でバーレーンと引き分けたために、第2戦のレバノンとの試合はメンバーを落とさずに戦って勝利をもぎとらざるを得なかった。慣れない土地、慣れない気候で体調は十分でなかった。
 にもかかわらず、最後の10分にUAEの選手の足が止まったのはなぜか。日本の選手が、それによって生まれたスペースを見逃さずにつくことができたのはなぜか。
 「UAEの選手はガソリンを使いきったんだよ。つまり体のなかに貯えていた糖を燃やし尽くしたんだろう」とスポーツを教えている友人が解説してくれた。
 「日本の選手のほうが、たくさんエネルギーを貯蔵していたか、使い方がうまかったかのどちらかだな」
 相手のスペースを鋭くつくことができたのは? 
 「判断力が働いたからだろ。つまり脳にエネルギー源の糖が、十分に送り込まれていたからだよ」
 つまり精神力のもとはエネルギー、つまり栄養だというわけだ。栄養をどのように貯え、どのように使うかについて日本のほうがすぐれていた。これはスポーツ科学の成果だと思うのだが、これも単純すぎるだろうか。


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