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サッカーマガジン 2004年3月16日号
ビバ!サッカー

ジーコと山本昌邦の比較論

 日本代表チームのジーコ監督へ厳しい批判が出はじめている。「監督を取り替えろ」という意見もある。ぼくは「任せたんだから続けてやらせたら」という考えだ。一方で、U−23の山本昌邦監督の評判はいい。「アテネに向けて、狙いどおりにチームを作り上げている」と評価されている。ぼくもそう思っているが「これが日本の将来に、しっかり、つながるのだろうか?」と疑問も持っている。
 ジーコ監督に対する批判は、2月18日に埼玉スタジアムで行なわれたオマーンとの試合のあと、ますます厳しくなった。多くの人は、相手は格下で、こちらは地元だから「大楽勝だろう」と思っていたようだが、案に相違して、引き分け寸前、ロスタイムに入って、やっと1点をあげるしまつだった。ひどくできの悪い試合だと酷評されていたが、ぼくの考えでは、この試合は、オマーンの守備策が的中したものだ。チェコ人のマチャラ監督は日本の中田と中村を集中的に抑えることを狙った。ジーコ監督も適切に対策を立て、両監督が秘術を尽くした試合だった。
 これは親善試合ではなく、ワールドカップの予選本番である。こういう苦しい試合を乗り切っていかなければ、ワールドカップを戦えるチームは育たない。
 U−23の山本監督への評価は、2月20日、大阪長居競技場で韓国に2−0で快勝してますます高くなった。現在の顔ぶれでオリンピック予選を勝ち抜くために、よく組織されたチームに仕上がっていた。
 ただし、これは親善試合である。真剣勝負の本番では、もっと厳しい戦いを覚悟しなければならない。
 ジーコ監督が欧州組中心に、予選を戦おうとしているのはいい。もっともすぐれたプレーヤーでチームを編成しなくてはワールドカップは戦えない。欧州組が、コンビを組める機会を予選の間に、できるだけ多く持ったほうがいい。
 一方、オリンピックは若いプレーヤーが将来大きく育つために国際的な経験を積む機会である。だからチームとしてまとまるよりも、個性ある若手が大きく伸びるようにして欲しい。極端に言えば、無理に勝つことを求めなくてもいい。
 とはいえ、山本監督は勝つことを求められている。したがって、自分の方針にもとづいてチームを仕上げていくのは当然である。山本監督も能力を示している。
 そういうわけで、ジーコも山本昌邦も悪くない。任せたんだから、やらせてやろうじゃないか。その結果は勝敗よりも、将来につながるかどうかで判定しようじゃないか。これが、ぼくの考えである。
 こんなことを書くと「負けてもいいという考えなんだな。おまえは愛国心がない」と非難されるだろうか。


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