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サッカーマガジン 2004年3月2日号
ビバ!サッカー

相太と闘莉王の存在価値

 「いいな。順調に仕上がっているな」
 アテネ・オリンピックをめざすU−23代表チームを見てそう思った。山本昌邦監督のイメージにチームのスタイルが近づいてきているという意味である。
 「でもパチンコの玉みたいだな」とも思った。ボールが釘に当たって、すばやく、つぎつぎに動く。パチンコと違うところは、釘のほうも玉をはじいたあと、すばやく動くことである。これが、山本監督のめざす機動力のサッカーなんだろう。
 これは、これでいい。国際試合では、日本より体格や体力でまさっている相手が多い。そういう相手に個人的な力比べをしたら分が悪い。こちらは頭脳をすばやく回転させてパスを組み立て、ボールをつぎつぎに動かして対抗しなければならない。
 でも、パスをつなぐ機動力だけに頼っていると単調になりがちである。相手が慣れてくると、なかなか攻め崩せない。しっかりした組織が武器ではあっても、ときには、組織にアクセントをつける個人的な力強さも欲しい。
 埼玉スタジアムで2月8日に行なわれたU−23イラン代表との試合では、18歳の平山相太が、そのアクセントになった。1メートル90の長身が生きているだけでなく、シュートが的確にゴールを襲うのがいい。1対1で後半ロスタイムに入ったあと、ゴール前で浮き球を胸で落としざまシュートしたのは、みごとだった。イランのゴールキーパーのすばやい反応にボールをはじかれたけれど「相太がいるぞ」と存在感を示した技術だった。
 2月11日に静岡エコパスタジアムで行なわれたロシア代表との試合では、闘莉王が存在感を示した。
 32分にハーフライン手前で、相手のボールを奪うと一気に速いドリブルで攻めあがり、ロシアの守りの中央を置き去りにした。ペナルティー・エリアに入る手前で、追いすがったDFオレニコフに倒されたけれどもボールを離さず、味方に渡して高松の先制点を作り出した。個人的な強さをアピールしたプレーだった。
 こういうアクセントは、組織のサッカーの中でとくに存在価値が高い。相太と闘莉王に経験を積ませただけでも2月上旬の国際親善2試合はよかったと思う。
 2人について問題もある。
 相太は身体作りがこれからである。フルに使えるようになるために、あと1年の時間が欲しい。
 闘莉王は闘志と意欲が先走って、守りで不安がある。反則も多い。リベロのポジションが適当かどうか、検討する必要があるかもしれない。
 とはいえ、2人の存在は、これからの楽しみである。


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