「へえ。ヴィッセル神戸の値段がたったの480万円?」と、ぼくはちょっとびっくりした。そのくらいなら、ぼくにも出せるよ。いや、やっぱり出せないか。
ヴィッセルの民事再生法適用申請、ひらたくいえば破産が明らかになったのが暮れの12月13日。その時点でインターネット商店街の「楽天」が、あとを引き受ける筋書きになっていたらしい。1カ月後の1月14日には営業権譲渡の契約が終わり、2月から新体制が動きだした。兵庫県からJリーグのチームがなくならないですんで「やれやれ」である。
地元の神戸新聞によると、営業権の譲渡価格は約480万円だという。「赤字会社の“のれん代”としては、妥当な価格」という弁護士の談話も載っていた。
旧会社は累積赤字42億円、負債総額が16億円。経営主体だった神戸市は貸付け金15億2000万円の大半を放棄する方針だそうだ。そんな赤字事業を引き継ぐのだから代金が安いのは当たり前ということだろう。
でも、売り渡されたのは「のれん」だけだろうか、ヴィッセル神戸の財産はいろいろあるのではないか、と考えた。
第一にJリーグヘの加盟権である。クラブの経営会社は変わっても、チームはJ1で試合を続けることができる。この権利は一つの財産である。プロ野球だとフランチャイズ制だから「兵庫県で興行をする独占権」ということになる。Jリーグは「ホームタウン」と称していて、フランチャイズの独占権ではないが、実際には、いまのところ、兵庫県内に競争相手が出てくる可能性はない。
もう一つの財産は選手たちである。抱えている選手たちとの契約は、旧会社から新会社へ引き継がれたはずである。いい選手が多ければ、優良資産を買い取ったことになる。
さらに、地元の自治体などがスタジアムや練習場の使用に引き続き便宜を図ってくれるならば、それも一つの財産ではないか。
こう考えると新会社「クリムゾンフットボールクラブ」は、いい買物をしたといえるのではないだろうか。480万円は超格安ではないか?
とはいえ、これまでと同じように赤字を垂れ流し続ければ大損害になる。
「そんなことにはしない。黒字で経営してみせる」。新会社の三木谷浩史社長は、そういうつもりで経営を引き受けたのだろう。
三木谷さんはクリムゾングループ「楽天」の会長で38歳。兵庫県出身である。地域に根ざしたクラブが、ビジネスとしても成り立つようにしてくれることを、ぼくは期待している。
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