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サッカーマガジン 2004年2月3日号
ビバ!サッカー

平山相太は大物になれるか

 「ありゃ、本物だね。平成の釜本が出てきたよ」と友人が言った。高校選手権で優勝した国見高校のエース、平山相太の話である。「釜本」は1968年メキシコ・オリンピックで、日本が銅メダルを取ったときの得点王、釜本邦茂だ。昭和の日本のサッカーを代表するストライカーだった。
 確かに平山くんはすばらしい。背が高くてヘディングが得意なだけでなく、小回りも利く。胸でボールを止め、足元に落とし、ドリブルで回り込んで相手をかわしてシュートする。高校のレベルではちょっと止められない。それが国見高校の優秀なチームメートに恵まれたのだから、得点王になったのは当然だ。
 でも、あまりみんなが「大器だ、大器だ」と騒ぎ立てると、ちょっと「あまのじゃく」を言ってみたくなる。
 「背が高いのは異常だよ。日本の選手で身長が1メートル90センチもあって大成したのはいなかったんじゃないの」
 とはいえ、日本の若者も最近は背が高くなっているので、平山くんもそれほど異常ではないのかもしれない。
 昭和のストライカー釜本が、京都の山城高校から高校選手権に出てきたときは、もっとがっしりしていたように思う。平山くんは、ひょろっと細い感じがする。
 「彼は2年生から3年生になるこの1年間でも背が伸びたんだそうだ。背が伸びている間は骨が柔らかいからね。あまり強い筋肉トレーニングはできない。背の伸びるのが止まってから鍛えれば、たくましくなるよ」と友人は平山くんに大きな期待を寄せている。
 「頭が良すぎるみたいだな」と、ぼくは、もう一つ「あまのじゃく」を言った。
 「最前線のストライカーは、本能的で荒削りがいい」
 「そういうストライカーもいるけどね。でも、周りが見えて、うまく動いて、パスを出せる幅の広いストライカーもいるんだよ」。 友人は、あくまで平山大器説である。
 そうかもしれない。ぼくは平山くんが、ゴール前の密集地帯の中で、よく味方を見ていて、いいパスを出すのを見て感心した。受け手にとって受けやすい柔らかなパスである。
 「大物になってもらいたいな」と、ぼくも「あまのじゃく」はやめた。ヨーロッパの、大柄で、タフで、がむしゃらなディフェンダーに囲まれても、はね返すことができるようになってもらいたい。
 進学先の筑波大で体を鍛え、Jリーグのチームでプレーして駆け引きを覚え、代表チームで外国の強力な相手とのプレーの経験をたくさん積み重ねるといいんじゃないかと思った。


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