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サッカーマガジン 2004年1月20日号
ビバ!サッカー

地方クラブ自立の環境を!

 『Jリーグのある暮らし』ができあがった。
 いや、これは、このページの読者仲間で作っている「ビバ!サッカー研究会」の3冊目の本のことである。12月の末から全国の書店で発売している。(中央公論事業出版発売、1300円)
 この本の題名には、わたしたち、ぼくたちの熱い思いがある。 
 毎週、毎週、自分の住んでいる町のチームが、あるいは自分の故郷のチームが、勝てば祝杯をあげ、負ければ残念と酒を飲む。いや飲まなくてもいい。友と勝因を語り、家族とともにくやしがる。 
 それが、ぼくたちの、私たちの日常の暮らしのなかにある。そういう楽しい、平和な世の中が日本でも他の国でも続いてほしいという願いがこもっている。 
 この本を書くために、仲間たちは、新潟に行き、仙台を訪ね、広島や名古屋にも飛んで、サッカーを愛し、その町の暮らしを愛している人たちの話を聞いた。アントラーズの町、鹿嶋の市長さんにインタビューした者もいる。
  そういう取材のなかから、次のようなことが浮かんできた。 
 それは、10年前まではサッカーが盛んでなかった地方都市のほうが、いまやサッカーヘの熱気が高いことである。企業のチームではなく、おれたちのチーム、私たちのクラブを持とうという市民の気持ちが熱くなっている。Jリーグ百年構想は地方の都市からスタートしている。 
 とはいえ、大企業の後ろ盾を持たないクラブの経営は苦しい。 
 2004年からのJリーグの課題は、大企業の後ろ盾を持たない地方都市のクラブが成長していくための環境づくりではないかと考えた。 
 これは、地方のクラブに財政援助をせよということではない。 
 中央でテレビ放映権を売り、広告を集めて得たお金を各クラブに配分する。こういうやり方には弊害もある。上を向いて口を開けていれば餌を放りこんでもらえるような気持ちになりかねないからである。現に大企業が資本を出している大都市圈のクラブのなかにさえ「テレビのお金をJリーグが配分してくれるのは助かる」といっているところがある。このように直接の援助は自立心を失わせる。
 そうではなくて、地域の市民の協力を得て、自分たちで広告を集め、テレビ放映をしてもらって、クラブを維持できるようでなければならない。
 地方都市のクラブが自分の力で資金を集め、自立して運営できるように、制度を変え、環境を整えてやるのが、これからの課題だろうと思う。地方分権改革がJリーグでも必要である。


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