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サッカーマガジン 2003年12月30日号
ビバ!サッカー

米沢から全国へ―アビーカの挑戦

 アビーカ、ABEECAって知ってますか?
 これは山形県米沢にあるサッカークラブの名前です。これは米沢の三つのおいしい食べ物の英語名からとった新語です。
 という話を聞き「おいしいものがある町なら、おいしい酒があるに違いない」と米沢ツアーに出掛けた。一行は東京の「よみうり・日本テレビ文化センター北千住」で開いている「ビバ!サッカー講座」の受講者仲間である。ただのグルメ旅行では大義名分がないと、米沢で講演をすることになった。受け入れを引き受けてくださった「アビーカ米沢」の皆さんには、ご迷惑だったかもしれない。
 米沢はすてきな町である。江戸時代の米沢潘は上杉鷹山公の経済改革と教育改革で知られている。現在も由緒ある町並みの面影を残し、人びとの活動には、さまざまな文化の香りがただよっている。日本有数の文化都市である。
 サッカー・クラブの「アビーカ」もその一つ、といいたいところだが、地元のスポーツ関係者は、その点では、まだものたりないようで、ぼくの米沢での講演で与えられた題目は「米沢にスポーツ文化を」というものだった。
 アビーカ米沢は少年サッカーを主力に活動している。女子チームもある。それ自体すでに立派なスポーツ文化である。
 ただ、ものたりないと地元の関係者が思うのは、それが全国的には知られていないからだろう。つまり「米沢発」の文化発信力が足りないのである。
 「アビーカが強いサッカーチームを持てば、米沢は日本だけでなく世界にも知られるようになるだろう。そうすれば、米沢のおいしいものも、みんなに知ってもらえるだろう」と、ぼくは思った。
 そこで、小規模だが世界トップのチームを育てたアルゼンチンの「アルヘンチノス・ジュニアーズ」を取材したときの話をした。また日本でクラブ作りにかかわった経験を話した。
 人口10万〜20万くらいの町で多種目、多世代の総合型スポーツクラブを根付かせ、そのクラブがJリーグをめざすチームを持てるようにするには、どうすればいいだろうか? 鳥栖が危機に陥っている一方で、徳島がJリーグめざして登ってきている。そういう動きのなかで米沢のスポーツ文化も考えてみた。
 その夜は郊外の白布(しらぶ)温泉のかやぶきの旅館にとまり、うまい酒と料理を楽しんだ。翌日は将棋の町、天童に行って、天皇杯2回戦のモンテディオ山形対立命館大学の試合を見た。
 ところで、アビーカの語源になっている三つのおいしい食べ物は、アップル(りんご)、ビーフ(米沢牛)、カープ(鯉)である。


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