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サッカーマガジン 2003年12月23日号
ビバ!サッカー

デジタル時代のテレビ中継

 日本でもデジタル・テレビの時代がこようとしている。2003年12月に東京、名古屋、大阪ではじまり2011年までには現在のアナログ放送は完全に姿を消すことになっている。
 デジタルになると、どうなるのか。基本的には多チャンネル、双方向、高品位(高画質、高音質)の放送ができるということらしい。
 そうなったらサッカーのテレビ中継はどう変わるだろうか。そんなことを考えていたら、11月29日のJリーグ最終節にNHKが2チャンネルを同時に使って中継をしたので、多チャンネル中継を見る疑似ミニ体験をした。
 横浜国際総合競技場で横浜F・マリノス対ジュビロ磐田の試合があった。埼玉スタジアムで浦和レッズ対鹿島アントラーズの試合があった。どちらも、優勝の行方にからんだカードである。NHKは横浜の試合を地上波の総合チャンネルで、埼玉の試合を衛星波のBS7で中継した。
 ぼくは横浜の試合を見ていたのだが、ときどき画面のすみにウィンドウが出て埼玉の画面が割りこんでくる。総合チャンネルのアナウンサーが「埼玉のほうで動きがありました。鹿島が点をとったようです」という。ぼくはリモコンをピコピコと動かしてBSに切り替える。ちょうど得点場面のリプレーが映っている。そんなふうにして、2チャンネル中継を楽しんだ。
 結末はドラマのようだった。横浜のほうは1−1で進んでいて、このままなら磐田の優勝だったのだが、ロスタイムに入って久保の決勝ゴールで横浜が勝ち越した。これで磐田の優勝はなくなった。
 そのとき鹿島は2−1で浦和をリードしていた。このままなら鹿島の優勝である。ところが、これもロスタイムに入ってエメルソンに同点ゴールを決められ、2−2になった。これなら横浜が優勝である。
 横浜の試合のほうが2分ほど早く進行していて、横浜では鹿島の試合が終わるのを、かたずをのんで待っていた。ぼくはリモコンをカチャ、カチャとまわして磐田→鹿島→横浜と優勝の女神が浮気するのを楽しんだ。横浜国際総合競技場では、場内のスクリーンにBSの画面を映し出していた。
 これは、たった2チャンネルの話である。本当にデジタル時代の多チャンネルになったら、どういう中継が行なわれるのかはわからない。
 それが楽しみでもあるが、リモコンをいじりながら考えたのは「2チャンネルで十分だな。これ以上、多機能になっても面倒で使いこなせないだろうな」ということだった。


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