女子マラソンの高橋尚子が2位になった。「アテネ・オリンピック出場に疑問符」だという。12月16日の東京国際女子マラソンの話である。
最初に飛ばしすぎて30キロあたりから、がくんとペースが落ちた。本人の話では「足が棒のようになった」という。
ぼくの勤めている加古川の兵庫大学には健康科学部健康システム学科がある。そこにはスポーツ科学の専門家が何人もいる。その一人にキャンパス内でばったり会ったのできいてみた。立ち話で、しかも質問したほうはシロートだから、間違って理解しているかもしれないが、とりあえず、ご紹介する。
「なぜ足が棒になるの?」
「燃料切れでしょうな」
「レース前の記者会見では小出監督が、絶好調だと話してた。心肺機能は万全だったのでは?」
「それは、万全だったでしょうね。しかしエンジンの調子が良くても、ガソリンがなくなれば走れない」
100メートルなどの短距離を走るときは、息をしないで、つまり酸素を補給しないで走り切る。おもちやの自動車のネジを巻いておいて、パッと離して飛び出させるようなものである。
長距離は呼吸をしながら走る。つまり酸素を補給して、燃料を燃やしながら走る。空気を取り入れてガソリンを燃やしエンジンを動かすようなものである。
「グリコーゲンを使い果たしたわけですよ。つまりガソリンがなくなったようなものです」
なるほど、人間の足のエンジンはグリコーゲンで動くのか。筋肉に蓄えてある燃料がなくなれば、エンジンは棒のように動かなくなるわけだ。
「マラソンでエンジンを全開にして走り続けると、90分しか燃料はもたないといわれています。それで2時間20分以上走り続けるには、効率よく燃料を使いながら42.195キロを走り抜けるように配分しなければならない」
「なに? 90分!」
と、ぼくは思った。
なぜなら、サッカーの試合時間は90分だからである。マラソンのペースであれば、サッカーでは90分間、走り続けることができるんだろうか、と考えた。
サッカーでは、酸素なしでダッシュすることを繰り返す。また、その場その場の状況に応じて、いろいろな動きを選択しなければならない。1週間に1〜2回の試合がある。
だから一筋ナワではいかないが、それにしても1試合90分は、うまくできている。「試合時間の研究」をする価値があるのではないか、と考えた。 |