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サッカーマガジン 2003年10月21日号
ビバ!サッカー

監督辞任と解任の違い

 ベガルタ仙台が清水秀彦監督を解任した。9月16日の発表だった。「いい監督だったけど、成績が悪いんじゃしようがないな」というのが単純な感想である。
 9月下旬になって、プロ野球巨人の原監督が辞任した。「いい監督だったのにどうしてだろう?」と思った。
 サッカーの清水監督は、1999年7月に就任して、まる4年あまりである。就任したときチームはJ2にいたが、しだいに順位をあげ、2001年はJ2の2位で、翌年からJ1に昇格した。「いい監督だった」というのは人柄だけではない。いい仕事もした。
 プロ野球の原監督は、就任2年目である。1年目に優勝とはなばなしいスタートだった。今年は阪神タイガース大躍進で影に隠れたが、極端に成績不振だったわけではない。主砲の松井が米国へ行ったり、ベテラン選手が故障続きだったりしたのが気の毒だった。人柄がファンに愛されているだけではない。実績も残している。「いい監督」でも成績が悪くなれば、やめざるを得なくなる。これはプロの監督の宿命である。
 しかし、原監督の場合は、優勝の望みがなくなったあとでも、親会社読売の実力者、渡邉恒雄オーナーは続投させるといっていたし、本人も続けるつもりだったようだ。それが、フロントに新しい幹部が入ってきたら雲行きがおかしくなった。「何かあったんじゃないか」とカンぐりたくなる。
 スポーツ新聞などの記事によると、来年度のコーチ陣の人選をめぐって、フロントと原監督の意見が合わなかったのが原因だという。フロントが監督を選び、監督がコーチング・スタッフを選ぶのがふつうだと思うが、この場合はフロントがコーチを決めて監督に押しつけようとしたのだろうか。
 原監督は「辞任」だという。3年契約で、まだあと1年の任期があったのに、自分から辞めたらしい。フロントと意見が合わないのなら「おれの意見が気に入らないのなら解任しろ」と頑張ればよかったのにと思う。契約期間中に球団側の都合で解任すれば、球団は残り期間の給料を支払はなくてはならない。自ら辞任すれば給料はもらえない。欧米では、そういう考え方は当たり前である。日本でも外国人監督については同じようなことがあった実例を、サッカーについても、プロ野球についても、ぼくは知っている。
 サッカーの清水監督の場合は、シーズン中の「解任」だった。契約の残り期間の報酬を受けるかどうかはしらないが、成績不振はフロントも共同の責任であって監督だけのせいではない。


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