ジーコ監督の率いる日本代表チームがホームで初勝利をあげた。8月20日、東京・国立競技場の対ナイジェリア戦、3−0である。ジーコ監督の就任11試合目。国内で7試合目で通算成績は3勝3引き分け5敗。この試合に、またこの勝利に、どんな意味があるのかを考えてみた。
コンフェデ杯の延長
「これは、コンフェデレーションズカップの延長だな」
8月20日の夜、東京の国立競技場で先発メンバーの発表を聞きながら考えた。日本代表対ナイジェリア代表の親善試合である。
守備ラインは、6月にフランスで行なわれたコンフェデレーションズカップの4人と同じである。これはフランスへ出発する直前、6月11日のパラグアイとの試合で初めて試みたラインだ。
中盤の前のほうは、中田ヒデと中村俊輔を並べている。この2人の夕レントを両立させるのは、ジーコ監督就任以来の課題である。中盤後方の2人、いわゆる2枚ボランチは稲本と遠藤。これもジーコ監督が就任当初から描いていた構想だろう。
トップの高原もコンフェデレーションズカップで、ずっと使われている。もう1人のトップは柳沢が復帰した。フランスで高原と組んでいた大久保は後半なかばからの交代出場だった。
新たに起用されたのはゴールキーパーの曽ヶ端だが、このポジションは1人しか使えないので、親善試合などの機会に、これまでのレギュラーだった楢崎以外の選手を起用してみる必要がある。国際試合の経験を与える必要もある。
こう見てみると、ナイジェリア戦の布陣の考え方は、基本的にはコンフェデレーションズカップの延長である。守備ラインのほかは、ジーコ監督就任当初の構想が、次第に固まりつつあるようにも思った。
過大評価は禁物
ホームでの初勝利はよかった。
高原が2得点したのもよかった。ジーコ監督期待の遠藤が守りの全面をしっかり押さえながら攻撃の組み立てにも貢献し、3点目を自らあげたのもよかった。
結果よければすべてよしで、勝ったときは、こういうことが新聞の見出しになる。コンフェデレーションズカップで上位進出を逃したときのジーコ批判は、とりあえず、影をひそめる。
それも、それでいい。ジーコ監督のチームづくりを、時間をかけて見守りたいというのが、ぼくの主張だから、ジーコ監督の考えが、じょじょに見えはじめ、それが結果になって表われたのは収穫だと思う。
とはいえ、過大評価するわけにはいかない。高原が2ゴールをあげたからといって「得点力不足が解消された」というわけにはいかない。
ジーコ監督自身が試合後の記者会見で、こう言っていた。
「(日本チームに)あれだけ技術のある選手がいるのに、フィニッシュがまずいのは、改善しなければならない点である」
この短い発言で、二つのことに感心した。
一つは、ブラジル人のジーコが日本選手のテクニックを高く評価していることである。日本のサッカーの基礎はしっかり固まったと思う。
もう一つは高原が、ゴール前で相手をかわして1点目をあげたことを喜びながらも決定力不足を指摘したことである。ジーコ監督は冷静だと思う。
アレックスの守りに不安
ナイジェリアは、選手招集に苦労して、15人しか揃わなかった。大部分の選手が欧州でプレーしていて、前日あるいは当日に来日した選手もいた。
もともとサッカーのレベルの高い国である。選手は外国のプロでプレーしている。「弱いチーム相手だから日本が勝てた」ということはできない。勝利は勝利で適切に評価していい。
ナイジェリアの選手の個人の能力は、テクニックとスピードが兼ね備わっていて非常に高い。それに当たりも激しい。日本の選手たちが1対1の勝負で見劣りしなかったのはよかった。評価の高かった遠藤保仁のほかに、守備ラインの坪井慶介のものおじしないプレーにも感心した。2人とも23歳。これから、さらに伸びるだろう。
ちょっと不安を感じたのはアレックスの守りである。
アレックスは、開始早々の1点目のとき、的確なパスが高原にぴたりとあった。後半にも再三、いいパスを前線に送っていた。攻撃面では非常に役立っている。
しかし守りの面ではどうか。ナイジェリアは前半、左サイドからの攻めが多かったので、日本の守備ラインの左サイドであるアレックスが試される機会は少なかった。ところが後半には、ナイジェリアの選手の個人技に振り回されてピンチを招く場面があった。
ジーコ監督がどう見たかは分からないが、こういう、いろいろな側面を見るために、このナイジェリア戦は意味があったと思う。
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