Jリーグファーストステージは終盤になってもつれた。もともと上位各チームの実力は同じくらいで、混戦になるだろうという予想だったから、とくに番狂わせがあったというわけではない。こういう実力が同じくらいのチームの争いで優勝の行方を左右する要因は何だろうか。
岡ちゃんがヒーロー?
Jリーグファーストステージ(前期)の第14節、7月26日の試合結果を、東京北千住駅近くのサッカー居酒屋で聞いた。毎月第2、第4土曜日の夜に北千住駅ビルの「読売・日本テレビ文化センター」でビバ!サッカー講座をやっている。それで試合を見に行くことはできないのだが、受講者の方は、ひいきチームの試合があると講座を休んで応援に出掛ける。
ぼくたちは講座が終わると、居酒屋に繰り出して延長戦に入り、応援に出掛けた連中は、試合が終わってから駆け付けて延長戦に加わったりする。講座といっても、わいわいがやがやとサッカーについて話したり書いたりしているのだから、教室でやっても居酒屋でやっても、同じように意義深いものがある、とぼくたちは信じている。
前節までトップに立っていたジェフユナイテッド市原が、清水エスパルスに0−3で敗れた。結果は携帯電話ですぐ分かる。横浜Fマリノスはガンバ大阪に2−1で勝った。この試合は居酒屋のテレビに映っていた。久保の1点目のヘディングも、2点目のジャンプボレーも、実に見事だった。
ベンチの岡田監督の表情が大写しになる。
「優勝したら岡田がヒーローになるのかな?」と、ぼくがつぶやいたら、隣で飲んでいた仲間が「そうなるでしょうね」と答えた。
この日、横浜がトップに立ち、市原は3位に落ちた。横浜は最終節にヴィッセル神戸に勝ちさえすれば優勝である。
オシム監督の功績は?
戦うのは選手だが、優勝を左右する要素としては監督の力量が大きい。試合ごとのヒーローとしては選手が取り上げられるけれども、優勝したときには監督がクローズアップされる。この日の試合については、翌日の新聞で「久保2発」が見出しになっていたけれども、横浜が優勝すれば、この野性味あふれるストライカーを生かして使った岡田監督の手腕が評価されることになる。
岡田監督は、1998年のフランス・ワールドカップのころは、直前に日本代表チームの監督になって、にわかに歩き方まで違ってみえるほど人柄が変わっていたが、フランス大会で1勝もあげられずに敗退したあと、苦労をして監督としての力量も人間の幅も大きくなったのではないかと思う。ともあれ、Jリーグ優勝の実績を積み上げることができれば「日本の大監督」に育つかもしれない。そうなることを期待したい。
今期のJリーグは、上位は混戦という大方の予想だったから、どこが優勝してもおかしくはないのだが、ジェフユナイテッド市原が、ぐんぐん進出しだのは意外だった。ぼくは開幕前には、ほとんど期待していなかった。
市原が勝負強くなったのは、オシム監督のおかげだ、という声が強いようである。「とにかく、走れ、走れですよ。選手たちの目付きも、それで変わってきました」とジェフの関係者が言っていた。
練習で走りこませることによって体力面を強化しただけでなく、精神面を締め直したというわけである。
フロントの経験も重要
第4土曜日の前日、金曜日の夜には千葉県の南船橋駅近くの読売・日本テレビ文化センター京葉で「ジェフユナイテッドのビバ!サッカー講座」があった。
この夜はジェフの関係者も、受講者のサポーターも、相当に緊張しているようだった。
翌日に優勝が決まるかもしれない試合がある。アウェーの試合で相手は、今期不振とはいえ名門の清水である。ほとんど全員が、期待と不安の両方の気持ちを抱えて日本平へ出掛けるようだった。
「この雰囲気がチームに伝わったら、選手たちには相当の重荷になるな」と、ちょっと不安になった。
不安は的中して、市原はあまりいいところを出せなかったようである。
しかし、とぼくは思う。
これは、将来につながる試練ではないか。市原の選手たちに、上位で優勝を争った自信と経験が、これからの土台になるのではないか。
そう思ったのは、この日、講義をしたジェフユナイテッドの代表取締役専務、三木博計(ひろかず)さんのお話にも、うなずけるものがあったからである。
三木さんは主として、Jリーグ・クラブの経営について基礎的な解説をされたのだが、そのなかに、チームのメンバーを入れ替えた事情、外人選手補強の方針、監督交代の事情などが、率直に出てきた。
フロントが勉強し、経験を積むことは監督以上に重要ではないか。ジェフではフロントも、いい経験をしつつあるのではないか、と思ったのである。
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