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サッカーマガジン 2003年8月12日号
ビバ!サッカー

子どもたちに遊びの場所を!
二つのビバ講座で意見が続出 

 東京の北千住と千葉県の南船橋で二つの「ビバ講座」を開いている。そこで、子どもたちと サッカーの話が出た。日本代表強化もいいが、小学生の段階では、エリートを選抜して鍛えるよりも、子どもたちに自由に遊べる場所と遊びのノウハウを与えなければ、という意見である。

市原の「おとどけ隊」
 「ビバ!サッカー講座」の第2号が誕生した。東京駅から京葉線で約30分、南船橋の駅のすぐそばにある「ララポート」5階の「読売・日本テレビ文化センター」で月に2回、金曜日の夜に2時間ずつである。「ジェフユナイテッドのビバ!サッカー講座」という名称で、Jリーグのビバ・ユナイテッド市原のスタッフが、毎回、ぼくといっしょに「報告」をする。 
 「ビバ!サッカー講座」は、もともとは東京の北千住で、はじめたもので、サッカーマガジンのこのページを読んでくださっている方がたを中心にした集まりだが、南船橋のほうは地域性を考えて、市原と千葉を軸に、ジェフユナイテッドを支援・応援している方がたを軸にしようと考えた。
 Jリーグ・クラブと地域との結びつきの一助になればという企画である。熱心な方がたで満員になって意を強くしている。 
 7月18日の第1回の講座では、ぼくの話のあと、ジェフのコーチの方が、サッカー「おとどけ隊」の紹介をした。ジェフの専門家のスタッフが、地域の小学校などを訪ねて子どもたちといっしょに、サッカーに結びつくような遊びをする。選手育成をめざすのではなく、子どもたちに体を動かし、心を動かすことを楽しんでもらう。Jリーグのクラブが、地域のために、すばらしい計画を実行していることに感心した。
 詳しいことはジェフのホームページでご覧いただきたい。講座の内容も、ホームページで紹介される予定になっている。

放課後の校庭で
 北千住のビバ!サッカー講座のほうは、始まってから、すでに3年になる。
 この北千住の講座でも、子どもたちのことが話題になった。メンバーには小学校、中学校の先生や少年サッカーの指導者もいる。いろいろな面からの話を聞くことができておもしろい。
 小・中学校が週5日制になった。土曜、日曜はあいている。ところが「土曜日は生徒を家庭に帰す日」という上のほうの方針で、子どもを学校から締め出してしまった。校庭は空いているのだが、子どもたちは遊びにくることができない。「むかしは日曜日に学校へいって、校庭で悪さをして叱られたものだ」と悪童の超OBはなつかしむが、いまの子どもたちは、まじめに管理されていて、野放図に「悪さ」をしたりはしないらしい。
 平日の校庭を使って「放課後遊びのプロジェクト」なるものを始めている例もある。小学校の部活代わりのつもりかもしれない。ボランティアの指導者がきて、こどもたちに遊びの「指導」をする。
 このプロジェクトが始まるまでは、子どもたちは自由に校庭を使って、勝手にゴールにボールを蹴りこんで遊んでいた。その遊び場が、プロジェクトのために奪われてしまった。
 「子どもは勝手に遊ばせておけばいいんだよ。広場さえあれば遊び方は子どもたちで考えるものだ」というのが悪童超OBの感慨だが、今の都会の子どもたちは「遊びの広場」から締め出されている。

管理者と指導者
 当局は「子どもたちのために」と考えて善意で計画するのだろうがうまくいかないようである。
 一つの問題は「管理」である。
 子どもたちを自由に遊ばせたら危ない。ケガをするおそれもあるし近ごろは「ヘンな人」が学校に侵入して「ヘンなこと」をするらしい。そんなことになったら、たいへんだから、見張っていなければならないが、小・中学校の先生は忙しくて放課後や休日まで、責任をもつ余裕はない。
 そこで休日は子どもたちを「家庭に帰そう」ということになる。平日の放課後はボランティアにお願いしようということになる。
 次の問題は「指導」である。
 ボランティアは善意で、張り切って指導しようとする。しかし平日の午後に優秀な専門家を求めることは難しい。そこで熱心なだけの人に出番がまわる。
 「ゴールをあげた子には100円あげるといって、ほんとに100円玉を用意してきた例があるんですよ」という話が出た。私財を投じて教育に貢献しているつもりかもしれない。
 ぼくの考えでは、ボランティアは善意に徹して、余計なことをせずにニコニコと見守っていればいい。多少のかすりきずは子どもの勲章だと思って放っておけばいい。
 そして、ときどき優秀な専門家である「おとどけ隊」がやってきて、子どもたちといっしょに遊んでやればいい。
 そのうちに、子どもたちのなかからサッカーをやりたいというグループも生まれてくるのではないか。


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