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サッカーマガジン 2003年4月9日号
ビバ!サッカー

ホームタウンが育ってきた!
アルビレックス新潟のブーム

 Jリーグ10年の大きな成果は「ホームタウン」の考え方が、理解されてきたことではないだろうか。住んでいる町に自分たちのクラブがあり、応援するチームがある。そういう形が暮らしを変え、文化を変えるかもしれない。J2のアルビレックス新潟の話を紹介しよう。

アウェーヘ1万人
 「新潟から埼玉ヘ1万人のサポーターが行ったんだ。バス25台をつらねたグループもあった。上越新幹線はサッカーを応援に行く人たちでいっぱいだったそうだ」。
 J2の第1節、3月16日に埼玉スタジアムで行なわれた大宮アルディージャ対アルビレックス新潟の試合の話である。雪の上越国境を越えてサポーターが大挙して応援に繰り出したという。 
 「アウェーの試合に1万人が出掛けるんだぜ。むかしはサッカー不毛の地なんていわれた土地に、この10年で、こんなにサッカーが根付いたんだよ」
 新潟の友人が、こう自慢した。 
 ワールドカップの会場になった新潟スタジアム「ビッグスワン」は、いま陸上競技のトラックをつける改装工事中。 
 そのためにアルビレックス新潟は、4月いっぱい、ビッグスワンを使えない。ホームの試合は、むかしからある市営の陸上競技場ですることになっている。 
 「2万人くらいは収容できるはずなんだけど、とても足りないよ。切符を手に入れるのがたいへんだよ」という友人の話だった。 
 ビッグスワンでの今季最初の試合は第10節、5月5日の子供の日になる。トラック完成を祝って陸上競技のイベントもいっしょに行なうことになっているという。4万人のスタンドが満員になることは間違いない。 
 アルビレックス新潟は、前年はビッグスワンに1試合平均3万5千人のお客さんを集めた。そのブームが今年も続いているようだ。

W杯招致をきっかけに
 ビッグスワンにサッカーを見に行った人たちの2割が、行き帰りに新潟駅の付近の飲食店に立ち寄るという推計もあるそうだ。家族連れでサッカーを楽しみ、家族連れで食事を楽しむ。サッカーが生活にとけこんでいるのであれば、すばらしい。 
 こういう話は3月18日に新潟に行ったときに聞いた。2002年FIFAワールドカップ新潟準備委員会の最後の総会があり、兵庫県の加古川市から出掛けたのである。 
 大会が終わって委員会を解散するための総会だから重要な議題があるわけはない。ぼくが重要な仕事をしていたわけでもない。わざわざ行くほどのことはなかったのだが、どうしても「有終の美」を見たいという個人的な気持ちで伊丹空港から新潟行きの飛行機に乗ったわけである。 
 思い入れにはわけがある。11年前新潟県サッカー協会の役員をしている親友から「新潟にワールドカップを誘致するから協力しろ」と電話が掛かってきた。それ以来、関西に住んでいながら新潟県出身というだけで仲間に入れてもらって、できるだけのアドバイスはしてきた。 
 クラブを作ってプロをめざそうじゃないか、外国人のコーチを雇って外の風を入れようじゃないか、新しいスタジアムをJリーグの本拠地にしようじゃないか、というようなことを言い続けた。それに新潟の人たちが柔軟に耳を傾けてくれた。その結果、ワールドカップでおおいに盛り上がり、アルビレックス新潟が育った。その11年の成果を解散総会でかみしめたいと思ったのだった。

Jリーグのある暮らし
 解散総会の最初に、会長の平山征夫知事があいさつをした。 
 「新潟に新しいスポーツ文化が生まれ、それがわれわれの生活に入ってきた。それをますます発展させよう」という趣旨だった。
 たしかに「サッカーのある生活」が新しい文化になりつつある。 地元のJリーグ・チームの選手たちにあこがれて子どもたちがボールを蹴る。孫にせがまれて、おじいさんがいっしょにスタジアムに行く。 
 帰りには家族連れで食事をする。若者たちは、県外のアウェーの試合にも出掛けて応援を楽しむ。そういうふうにサッカーが暮らしのなかにとけこんでいけば人生は楽しい。 
 いま、ぼくたちは「Jリーグのある暮らし」というテーマで新しい本の企画を進めている。
 平山知事のあいさつは、その企画の趣旨をそのまま言ってくれたようなものだった。 
 新しい本は「ビバ!サッカー研究会」のメンバーが取材をはじめたところである。毎度、紹介しているとおり、研究会はこのページの首都圏の読者有志のグループである。 
 手分けをしてJリーグのある町を調べる。Jリーグが人びとの間に本当に根を下ろしつつあるだろうか。暮らしを新しくしているだろうか。そういうことを確かめたい。 
 ほかに仕事を持ちながらの取材である。地方に出掛けて調べるのは、たいへんだ。各地のサポーターで材料を提供していただける方がいたら。ぜひ協力していただきたい。 


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