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サッカーマガジン 2003年3月19日号
ビバ!サッカー

原点は小学校の「クラブ活動」
中学の「部活」にどうつなぐか

 中学校の問題を、いろいろな角度から考え続けてきているが、今回は小学校のサッカーについても触れてみよう。学校教育外のいわゆる「スポーツ少年団」ではなく、小学校の授業としての「クラブ活動」でサッカーは人気があるようだ。これが普及の原点かもしれない。

小学校のサッカー
 仲間を集めて「ビバ!サッカー研究会」と称するものをやっている。月に2回、東京の読売・日本テレビ文化センター北千住の「ビバ!サッカー講座」に集まっている。
 この仲間のなかに、小学校の先生がいる。中学校の先生もいる。ともに女性である。 
 このおふたりは、中学生以下の年代のサッカーの話については当然、意見がある。体育の先生ではないが教育の現場を踏んでいるから、その話には説得力がある。 
 小学校でもサッカーをやっている。これは授業としての「クラブ活動」であって、いわゆる「部活」ではない。 
 だいぶ前のことだが、小学校の授業としてスポーツ等をやらせるのを文部省が「クラブ活動」と名付けたので、町のスポーツクラブとまぎらわしくなった。ここでは、小学校の授業の一環としてのスポーツ活動は「クラブ活動」と括弧つきで書いておくことにする。
 「クラブ活動」は、学校内の授業だから、他の小学校との対抗試合はしないのが建て前である。しかし、北千住の仲間が教えている小学校では、6年生のときに選抜チームを作って、区の体育部の主催で、区内の他の小学校との大会をする。その参加チームの中から選んでさらに「区選抜」を作る、というようなことをやっている。
 小学校内の「クラブ活動」は、サッカーの普及に役立っている。6年生になれば、さらに上の目標もあって、レベルアップにつながっているのだろうと想像した。

部活か、クラブか
 その小学校の先生が、1年生のときから6年生のときまで、6年間受け持ったクラスの子どもたちのなかから、小学校の選抜チーム15人中に8人入った。サッカー好きの先生の影響に違いない。 
 その中に、とくに上手な子がいて区の選抜にも選ばれた。サッカー好きの先生は、その子が中学校でサッカー部に入り、中学校大会で活躍することを期待したに違いない。中学校のスポーツも学校教育活動の一環ということにはなっているが、課外の部活動、すなわち「部活」で対外試合ができる。全国大会もある。 
 ところが、である。 
 その子は中学校では「サッカー部には入らない」と言い出した。学校の「部活」はしないで、町のクラブでサッカーをするという。推測するに区の選抜で活躍したので、町のサッカークラブにスカウトされたのではないか。 
 ぼくの考えでは、それも悪くはない。すぐれた指導者がいて、きちんと運営されていればの話ではあるが素質のある子が集まって、たがいに競い合い、磨き合うのはレベルアップにつながる。かりにクラブの指導者が時代遅れで、運営がでたらめだったりしたら、そのクラブに入らなければいいし間違えて入っても辞めて他のクラブに移ることもできる。
 中学のサッカー部だと、そうはいかない。サッカーを指導できる先生がいるとは限らない。経験も知識も乏しい先輩たちがシゴくだけかもしれない。だからといって、辞めて他の中学に移るのは簡単ではない。

学校スポーツのよさ
 先生のほうには、町のクラブでやることについて二つの不安がある。
 一つは町のクラブでのスポーツ生活が、その子の将来にとっていいかどうかである。 
 サッカーの技量は伸びても、人間としての豊かな心が育つかどうか。またすぐれた素材ばかりが集まっているなかで、競争に負けて落ちこぼれたら、心までむしばまれるのではないか。 
 もう一つの不安は、その子が「学校スポーツのよさ」を味わう機会を失うのではないか、ということである。 
 少しだけ年齢の違う上級生と下級生がいて、いろいろな仲間と付き合える。青春の喜びも、悲しみも、悩みも分かち合って語り合える。サッカーがへたな子もいるが、サッカーがへたでも、ほかにいいところをもっていて、それがお互いに役立つことを学ぶことができる。若いころのそういう経験は貴重である。 
 「できたら、町のクラブと学校の部活と両方やれたらいいわね。ウイークデーには中学校で部活をして、週末にはクラブに練習に行くとかね」 
 「中学校の大会には中学から出て、クラブの試合にはクラブから出ることはできないのかしら?」  
 前回このページに書いた二重登録はできないか、という問題である。  
 ところで、こういうサッカー談義をやっているわが研究会は4月からの新会員を募集している。  
 問い合わせは  
 読売・日本テレビ文化センター北千住「ビバ!サッカー講座」


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