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サッカーマガジン 2003年3月12日号
ビバ!サッカー

中学生以下は二重登録でいい
クラブと学校の両立のために

 中学校のサッカー部が難しい立ち場に立たされている。その問題を、いろいろな角度から考えていきたい。一つの問題は、学校チームと地域クラブを両立させることができるかどうかである。1人のプレーヤーが学校とクラブの両方に所属する二重登録を認める案はどうだろうか?

地方協会の上乗せも
 中学校のサッカーがどうなっているかを考えているなかで前回は「中学生以下の子どもから個人登録費を徴収することはない」という考えを述べた。またチーム登録も各地方に任せてはどうかと提案した。地方分権の勧めである。
 「そんなことをしたら日本サッカー協会の財政はどうなるんだよう」と協会財務担当理事の悲鳴が聞こえてきそうである。
 たしかに、裾野の広い底辺からの「徴税権」を奪っては、中央政府、ではない中央協会の財政はピンチである。
 しかし、ここでは日本サッカー協会の財政問題は、しばらく横に置いておいて「日本代表チームの強化費などを子どもたちに負担させるのはおかしいじゃないか」という単純な疑問だけを提起するだけにして話を進めよう。 
 ただし、これは「中央政府」だけの問題ではない。「地方政府」つまり県などの地方サッカー協会も財政難は同じである。そこで日本サッカー協会へ上納する「国税」のほかに「地方税」を上乗せしている。そのために末端のチームの負担は、さらに大きくなっている。
 もちろん、これは高校生以上のチームにとっても問題である。大学や社会人になると、学連やリーグの負担金も加わるから、かなりの金額になる。
 しかし、これも話が複雑になるので、ここでは高校生以上のチームは、とりあえず横に置いておいて、中学以下のチームについて話を進めることにする。

学校と地域クラブ
 というわけで、日本サッカー協会と都道府県サッカー協会の財政について議論するのは別の機会に譲ることにする。ここでは、中学生以下のチームの取り扱いについては、市町村単位に分権すべきだという前回の提言を繰り返しておく。市町村の実情は、地元の人がもっともよく知っているからである。
 ところで、地方のチームが協会にお金を払うのは、自分たちが試合をしたいからである。中学校チームとして試合をしたい、地域のクラブ・チームとして試合をしたい、地域の代表チームとして試合をしたいなど、いろいろなケースがある。
 地方の小さな町を例として考えてみよう。
 その町に10くらいの中学校があるとする。それぞれの中学校に「中学校チーム」がある。このような学校チームは、それぞれの学校の熱心な先生がたのおかげで、これまでサッカーの底辺拡大に大きな貢献をしてきた。
 その町に「FC地域」というクラブができた。そのクラブは各中学校の優秀な選手を集めて、第3種(中学生相当年齢)のチームを編成している。
 多くのチームと、多くのプレーヤーに試合の機会を与えるには、勝ち抜きトーナメントよりもリーグ戦がいい。というわけで、この町で第3種チームのリーグ戦をすることになったら、どうなるか。
 「FC地域」は、中学生の優秀選手を集めているのだから、飛び抜けて強くて当たり前だろう。

二重登録の勧め
 そこで、その町の第3種リーグは中学校のチームだけで行い「FC地域」の参加は認めないことにした。つまり、これは「中体連」リーグではあっても、協会の「第3種」リーグではないと考えることができる。
 こういう場合、二つのやり方を想定できる。 
 第一は「FC地域」の優秀選手を除外した「中学校チーム」でリーグを組織することである。優秀選手を除外しているのだから、いわゆる選手強化には、あまり貢献できない。
 第二は「FC地域」の優秀選手がそれぞれ、自分の通っている中学校のチームに加わってリーグに出場することである。中学は義務教育だから、みな、どこかの中学の生徒であるはずである。 
 この第二の場合に、また二通りの考え方ができる。
 一つは、優秀選手は本来「中学校チーム」の所属で、地域選抜として「FC地域」に加わっているという考え方である。
 もう一つは、優秀選手は本来「FC地域」の登録選手だが、その中学校の「補強選手」としてリーグに出場するという考え方である。つまり中学校チームのほうが「選抜」だと考えるわけである。
 いずれにしても、一人の選手が二つのチームから試合に出ることができることになる。
 そんな面倒なことを考えるくらいなら、学校とクラブへの二重登録を認めればいいじゃないか、ということになる。 
 その場合、登録費も二重に納めることになるのだろうか?


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