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サッカーマガジン 2003年2月26日号
ビバ!サッカー

中学チームのあり方を考える
協会へ個人登録をしない現実

 日本サッカー協会の構造改革のテーマとして、中学校のサッカーをどうするか、という問題がある。少子化と指導者不足が、この年代のスポーツの大きな問題になっているが、もう一つ「第三の現実」として、子どもたちから個人登録費を徴収するのが適当かどうかを考えたい。

チーム数は増加傾向
 今回は前回の続きである。
 前回はインフルエンザにやられて、夢を見ながら中学校チームについて考えた。
 日本では、子どものチームも、みな日本サッカー協会に登録し、チーム登録費のほかに選手たちは個人登録費を払っている。ところが中学校では、チーム登録費も個人登録費も払わないところが増えてきているという話である。
 それは本当だろうか。風邪が治ったら、しっかり調べて考えてみようと、前回は書いた。
 風邪はなかなか治らない、高熱は3日間で下がったのだが、なんとなくだるくて考える気が起こらない。
 それでも、少しずつ調べてみることにした。
 というわけで不十分な調査なのだが、意外なことが分かってきた。それは中学生のチーム数は減っていないということである。
 1999年度から2002年度までの第3種のチーム登録数を比べてみる。第3種は中学生相当年齢のチームである。 
 99年 6,352チーム 
 00年 6,379チーム 
 01年 6,468チーム 
 02年 6,495チーム
 チーム数は減るどころか、むしろしだいに増えている。
 第3種には学校単位でない、クラブの中学生相当年齢の子どもたちのチームを含んでいるが、大部分は中学校チームだろう。
 もっとも、新たに増加した部分は主として学校外のクラブである可能性もある。

登録選手数は減少
 日本サッカー協会には、チーム登録だけでなく、選手登録の制度もある。そこで第3種の登録選手数を、くらべてみる。
 99年 21万3,286人 
 00年 20万4,223人 
 01年 19万8,369人 
 02年 19万4,538人
 登録選手数のほうは、逆に少しずつ減ってきている。
 これは意外でも、不思議でもない。いわゆる少子化で、日本全体の人口が若い世代になるほど減ってきている。その割りには、サッカーの登録者数は減り方は少ないようだ。1チームあたり30人前後の部員を抱え、減り方は毎年1チームあたり1人程度である。
 というわけで「それほど心配することはないじゃないか」と思ったのだが、友人が「それは甘い。草の根の現実を見なきゃ」と忠告した。
 第一の現実は、中学校のスポーツチームが成り立たなくなりつつあることである。サッカーの場合は、いまのところは部員数の減り方は目立たない。しかし、バレーボールなどでは、一つの中学校では部員数が足りなくて、廃部になったり、2校あわせて1チームというところも増えている。少子化は日本全体の問題だから、サッカーもやがて同じ運命だろうという。
 第二の現実は、熱心に部活の指導をする先生がいなくなりつつあることである。これも他のスポーツで目立っているが、サッカーでも同じような現象が急速に広まってきているという。

協会への非登録
 さて、中学校のサッカーには、もう一つ、第三の現実がある。それは前回にちょっと触れた「協会へ登録しないチーム」のことである。
 前回は「協会に登録しないチームが増えている」と書いたが実は「増えている」のではなくて「以前から多い」ということのようだ。
 つまり、協会に登録している中学生年齢相当のチームが6500近くあり、登録選手が20万人くらいあるほかに、登録していないチームと選手が、もともと、かなりあるということだ。それも東京、関西、福岡など大都市圏に多いという。
 これは、日本サッカー協会が財政難対策として、個人登録費を徴収しはじめたときにさかのぼる。
 当時、中学校体育連盟(中体連)は、生徒から個人登録費を集めることに強硬に反対した。中学校のサッカーは、学校教育の一環である。教育に必要な実費以外のお金を、生徒個人からとるなんて許されない、という理屈である。
 いろいろ、いきさつがあったなかで、中体連は「協会が個人登録費を徴収するのを妨げないが、協力はしない」という態度をとった。協会は「協会主催の大会に非登録チームを参加させない原則は曲げないが、末端に非登録チームがあっても黙認する」ことにした。
 というわけで、協会に登録しないで中体連の大会に参加している中学校チームが各地にたくさんあることになった。
 この問題を、どうすればいいかもう少し突っ込んで、さらに考えてみることにしよう。


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