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サッカーマガジン 2003年1月8日&15日号
ビバ!サッカー

2003年を地域クラブ元年に
新しい試みを育てる施策を

 Jリーグ10年の年に日韓共催のワールドカップが大きな成功を収めた。これは日本のサッカーの大きなゴールだった。ゴールの次はキックオフである。次の10年のために2003年は新しい目標へのキックオフの年にしたい。その目標は地域のクラブ組織の定着である。

Jリーグの10年
 冬場はスポーツ・イベントが少ないので、新聞のスポーツ面は材料不足になる。それで企画ものや連載ものが目に付くようになる。
 暮れの新聞の連載では、12月上旬に日本経済新聞に載った「ポストW杯、日本サッカーの針路」がいい企画だった。Jリーグだけでなく底辺の地域クラブの現状を取材し、将来を考えていた。
 12月中旬には、地方紙に「Jリーグ、10年の軌跡」が連載された。ぼくは神戸新聞の夕刊で読んだのだが、おそらくは通信社の配信だろう。これはJ1とJ2のクラブを追って、やはり地域との結びつきに焦点をあてていた。
 「地域に根ざしたクラブを」というのは、最初からJリーグが掲げていた理念だが、この10年間に、それが必ずしも強力に推進されていたとは限らない。 
 いや、スローガンとしては、かなり浸透していたし、各地でそれに呼応した胎動が始まっているのだが、Jリーグの組織は旧来の企業スポーツ出身者で動かされていて、地方のグラブは主役ではなかった。また大衆やマスコミの興味は、最初は本格的なプロ組織としてのJリーグの発足に集まり、ワールドカップへ向けては日本代表チームの強化のほうに集中していた。 
 しかし、ワールドカップが終わったいま、企業の支援の少ない地方のクラブが、地域の文化の一環として大衆のために役立つためには何をしたらいいか。どのようにしたら運営していけるかを考えなければならないときである。

愛媛FCの試み
 日本経済新聞の連載の第1回では「我が町にもプロチーム」と題して四国の愛媛FCを取り上げていた。
 愛媛FCは、1990年の高校選手権で優勝した南宇和高校の石橋智之さんが総監督として中心になっている。石橋さんが松山市で鉄鋼業を経営している亀井文雄さんを訪ねて地元の中小企業の協力を求めた。その場面から記事がはじまっている。
 愛媛FCはユニフオームスポンサ−3社と看板スポンサー45社の支援を取り付けた。年間運営費は5千万円。役員も選手も無給。全員が別に仕事を持っている。選手の大半は南宇和高の出身、あるいはクラブ育ちである。
 この記事を読んで「これは、いま各地で動いている地方都市でのサッカークラブ作りの一つのタイプだ」と思った。ぼくの住んでいる地域の近くの姫路市でも、同じような目標をもってNPO法人「スポーツクラブ・エストレラ」が動きはじめている。島根にもあるときいている。いろいろなところで、苦闘しながらも新しい波が起きている。
 ポイントはいくつもある。 
 一つは、高校の先生方が動いていることである。地方では高校がサッカー界の中心である。その人たちが従来の学校スポーツの枠を超えて、自ら考え、自ら動いている。
  もう一つのポイントは、地元のたくさんの企業に協力を求めていることである。Jリーグのなかには「親会社は大企業」というクラブもあるが、地方では地域ぐるみの応援の一環として企業が協力している。

パートタイムの勧め
 日本経済新聞の連載の第1回では愛媛FCとともに群馬県リーグのザスパ草津を取り上げていた。
 温泉で有名な草津で旅館を営む飯島啓一さんの構想でクラブづくりが始まり、監督兼選手の奥野僚右さんら元Jリーガーも加わった。選手たちは温泉町の旅館や飲食店で働きながらクラブでプレーしている。
 1982年のスペイン・ワールドカップの期間中に、日本代表チームがスペインに遠征して、バルセロナの小さなクラブで試合をしたことがある。そのときクラブの役員に「選手たちにいくら給料を払っているのか」ときいてみた。「ほんの、おこづかいだよ。みな、ほかに仕事を持っているんだ。スペインでは、フルタイムのプレーヤーは、ごく少数だよ」という答えだった。
 スペインのサッカーといえば、レアル・マドリードやFCバルセロナのスーパースターを思い浮べるが、実は町の多くのクラブはパートタイムのプレーヤーによって構成されているのだった。
 日本でも、こういうパートタイムのプロが成り立たないと、地方のクラブは支えられないのではないか。
 連載には、そのほかのクラブも取り上げられていた。第8回にはサッカー以外のスポーツも取り入れて総合型クラブをめざしているところとして、湘南ベルマーレ、横浜の「かながわクラブ」、福島県双葉町の「双葉ふれあいクラブ」が登場した。
 こういう、いろいろな試みの芽が育つのを、どのようにしたら支援できるだろうか。日本サッカー協会にしっかり考えてもらいたいと思う。


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