日本と韓国がそろって第2ラウンド(決勝トーナメント)進出を果たした。アフリカ勢からも初出場のセネガルが生き残った。欧州と南米のビックネームにまじって、新しい力がベスト16に入ったことを喜んでいる。たたかいぶりの内容からも世界のサッカー地図が変わりつつあることを感じている。
共催そろい踏み
韓国と日本がそろって第一目標の第2ラウンド(決勝トーナメント)進出を達成したことを喜んでいる。2002年6月14日は韓国と日本の両方に共通のサッカー記念日になった。
14日の午後、大阪の長居スタジアムで日本が第2ラウンド進出を決めた試合を見たあと、夜の仁川文鶴スタジアムからのテレビ中継を、はらはらしながら見ていた。韓国もベスト16に進出してもらいたい。そうでなければ日韓共催の意義がそこなわれる。そういう気持ちだった。
スポーツの勝敗に政治的な意味をもたせるつもりはないが、今回の場合は、韓国と日本がそろって16強に進出するのを強く願っていた。それには次のような事情がある。
2年前に新潟で「日韓サッカー・ジャーナリスト会議」を開いたときに、参加した韓国のスポーツ記者が「日本が16強に進出し韓国が進出できなかったら韓国にとって大きな打撃となる」と発言した。昨年、ソウルで「韓日サッカー・ジャーナリスト・セミナー」が開かれたときにも同じような発言をした。韓国だけが負けると、韓国の大衆がサッカーから離れていってしまうということだった。
韓国のサッカーが危機に立つようでは、日本だけでなくアジアのサッカー全体の将来にも影響する。そうなっては、たいへんである。
韓国はポルトガルに1−0で勝って進出を決めた。朴智星(パク・チソン)の決勝点はみごとだった。よかった、よかった。日韓揃ってアジアのサッカーの新しい扉を開いた。
アフリカ勢の健闘
ベスト16は、欧州勢がトルコを含めて9チーム、北中南米が4チーム、アジアが開催国の日韓2チーム、アフリカから1チームとなった。アフリカからは5チーム参加したのだが残ったのはセネガルだけである。
セネガルの試合ぶりはめざましかった。開幕試合で優勝候補フランスに1−0で勝ったときは、よくある初戦の番狂わせかと思ったのだが、そうではなかった。第1ラウンド(グループリーグ)でデンマークと1−1の引き分け。ウルグアイには、前半3−0とリードしながら後半の立ち上がりの失点で浮き足立って追い付かれて3−3の引き分けになったが、90年大会でセンセーションを起こしたカメルーンと同じたたかいぶりだった。
どの選手も、アフリカ西海岸の黒人選手特有のやわらかくて鋭いからだの動きと、それを生かしたテクニックを持っている。足技だけでなくスルーパスを受けるための後方からの走り出しもはやい。
大分の第2ラウンド1回戦、スウェーデンとの延長戦に決着を付けたゴールデンゴールはすばらしかった。ボールを受けたチャウが、左斜め前に高速ドリブルで走りながら、後も見ずにかかとで後ヘパス、後方から走り込んできたカマラが、それを拾ってゴールに向かって突進した。延長戦の緊迫したなかで、しかもくたびれはてた状態で、あのトリッキーなコンビプレーがひらめくなんて「まるでブラジルだ」と思った。テクニックもチームプレーも南米のトップクラスに劣らない。世界のビッグネームにあと一歩である。
独自のスタイルを
アフリカ勢は、セネガル以外は振るわなかった。しかし試合の内容は悪くない。南アフリカはスペインから2点をとったし、ナイジェリアはイングランドと引き分けた。カメルーンは、ドイツとの試合で、結果は2−0の敗戦だったが、鋭い個人技の逆襲を生かしてチャンスの数は多かった。ドイツが苦しまぎれの反則で守り、カメルーンがそれに対抗したのでイエローカード合計16枚の新記録になった試合である。
フランス人の記者が、日本代表のトルシエ監督に「今回のアフリカ勢は弱いね」と質問した。トルシエ監督はアフリカで指導した経験がある。それで意見を聞こうとしたわけである。トルシエ監督は「そんなことはない。カメルーンもナイジェリアもよくやっている」とちょっとムキになって反論していた。ぼくも同意見である。国内体制が整備され、代表チームとしての国際試合の経験を積む機会が増えれば、ワールドカップの優勝も近いと思う。
その点では、アジアはまだまだである。日本と韓国が今回、やっと世界のトップクラスヘの第一歩を踏み出したが、個人の体質の強さ、鋭さ、柔らかさでは、アフリカ勢に劣る。それをカバーするために、労働量、判断の正確さと速さで組織力を生かすことをめざしている。そういう新しいスタイルを日本と韓国はやっと見いだしかけた段階だと思う。
とはいえ、今回のワールドカップは、欧州と南米中心だった世界地図をアジアを含めたものに塗り変える転機になるのではないだろうか。
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