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サッカーマガジン 2001年11月28日号
ビバ!サッカー

続・中学の部活と地域のクラブ
協会への登録は必要だろうか

 中学校の部活は部員不足で悩んでいる。地域のクラブはお金がなくて困っている。そこで学校チームにクラブの選手が二重登録する問題や、登録費節約のために協会に加盟しないチームが出てきている。いわば現在の日本サッカー協会の登録制度に対する抵抗である。

二重登録の問題
 これは前号の続きである。
 前回に紹介したポイントはこうだった。
 一つは、ある地方では中学校のチームが県内の中体連の大会に出るときに、日本サッカー協会のクラブチームとの二重登録を黙認している。
 「中体連は二重登録だなんていいませんよ」とある中学の関係者が言っていたという話である。
 もう一つは、地域のなかで中学校のチームとクラブのチームがまぜこぜにリーグ戦をしているが、なかには協会に加盟登録していないチームがある。「非公式戦だからサッカー協会への登録は必要ない」という話だった。
 日本サッカー協会の立場としては「困ったこと」だろうと思う。
 二重登録の問題についていえば、1人の選手が二つのチームから出場したら選手権の体系が成り立たなくなる。ある選手がAチームとBチームに二重登録していたとする。ともに勝ち進んでAチームとBチームが対戦することになったらどうするかということになる。あるいは、ある選手がAチームから出場して1回戦で敗退したら、次は勝ち残っているBチームから出るケースもあり得るこれは不公正である。だから二重登録は認めるべきでない。これは正論である。
 しかし、地域の中体連にも言い分がある。
 中体連の大会は、中学校だけの大会で、そのなかでは二重登録ではない。他の体系の選手権と二重登録になっても不公正ではない。

不加盟の問題
 もう一つの「協会に加盟登録をしないで地域のなかで非公式な試合はできる」という考えは、サッカー協会にとっては、さらに頭の痛い問題だろう。
 歴史的ないきさつをいうと、協会(アソシエーション)の決めたルールにしたがって試合をするのが、アソシエーション・フットボールである。アソシエーション・フットボールはサッカーの正式名称だ。
 仲間が集まって協会を作り、その協会でルールを統一した。だから、このルールで試合をする仲間は、みな協会のメンバーである。これが建て前である。協会ルールで試合するチームは、みな協会に加盟すべきである。
 1863年にイングランドにサッカー協会が設立されたころだったら、これは説得力のある理屈だろう。
 しかし、それから100年以上たった現在、世界のいたるところで、協会に登録するほどではない草サッカーの連中がボールを蹴っている。これを全部協会に加盟させるのは、どだい無理な話である。
 問題は登録するほどではない草サッカーと登録すべき選手権サッカーとの境目がどこにあるかである。
 中体連に登録している中学のサッカー部のチームが、町のクラブのジュニア・ユース・チームとリーグ戦をする。このリーグで優勝したチームが、サッカー協会の選手権への出場権を得るわけではない。そうであれば、これは非公式戦で協会へ登録しても利益がない。
  これも理屈である。

登録料が高い?
 この問題にはお金もからむ。
 サッカー協会は、加盟登録したチームから登録費を徴収する。これがばかにならない金額である。日本サッカー協会の関係者は「それほど不当な高額ではない」というのだが、末端のチームにとってはかなりの負担になっている。地方協会の賦課金、リーグ戦をするための連盟などへの加盟費、強化賛助金、個人登録費などが加わってくるからである。
 現場のチームにとっては、支払うお金は自分たちが試合をするためのものである。支払っても、それほど面倒を見てもらえないのであれば、自分たちの仲間同士でリーグを組んだほうがいい。そのための経費を分担したほうが、ずっと安上がりである。
 協会に加盟登録すれば、全国大会に参加することができる。登録料は、そのための権利金だと考えることもできる。
 ところが全国大会の予選は、たいてい勝ち抜きのトーナメントである。1回戦で負けたチームは1試合しかできない。1〜2試合のための権利金としては高すぎる。
 そう考えると、草の根チームの加盟登録料は「同じサッカーの仲間である」ということの証である程度の名目的なものでいいのではないか。地域の大会やリーグ戦は地方分権で、それぞれ自由にやらせてはどうかと考えた。
 日本サッカー協会の収入は減るが。そろそろ協会もバブルの精算をして緊縮財政をめざすべき時期ではないだろうか。


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