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サッカーマガジン 2001年11月21日号
ビバ!サッカー

中学校の部活と地域のクラブ
中体連と協会の関係に疑問符

 「クラブをつくろう」というスローガンが、あちこちでかかげられている。文部科学省も、県や市も、日本サッカー協会も叫んでいる。しかし草の根レベルの現場では、そう簡単な話ではない。とくに中学校の部活は、いま非常に難しい立場におかれている。

中学の部活が崩壊?
 大都市に隣接した県のある大きな市ということにしておこう。実際に聞いた話だが差し障りがあるかもしれない。
 三つの中学校がある。その三つの中学校のサッカー部が合併して一つのサッカークラブを作った。かりに名称を唐崎FCとしておく。唐崎はその地域の地名である。
 唐崎の三つの中学校のサッカー部が合併した理由は二つある。
 一つは少子化である。いま子どもの数がどんどん減っている。1組の夫婦が1人か2人しか子どもを生まないからである。むかしは5人も6人も生んだものだった。「律儀者の子だくさん」だった。日本人がだんだん律儀でなくなったのかもしれない。女性がなかなか結婚しない、したがらないのも理由らしい。
 子どもが減れば、中学校の生徒の数も減る。それにともなってサッカー部の部員数も減る。それで一つの中学校だけではチームが成り立たなくなった。
 合併することになった理由は、もう一つある。
 それは指導者不足である。子どもの数は減っても先生の数は減らないのだから指導者は余りそうなものだが、そうではないらしい。
 先生の仕事は授業で教えることと学校を運営することである。部活動を指導することは本来の業務ではない。本来の仕事だけで忙しいので部活の顧問は引き受けたがらない。家庭を顧みないでサッカー部の指導をするという先生は、非常に少なくなったという話である。

地域クラブの利点
 三つの中学校のうちA中学にはサッカーの好きな熱心な先生がいる。しかしB中学とC中学には指導者がいない。そこでA中学の先生がB中学とC中学のサッカー部員の指導も引き受けた。これが唐崎FCの生まれたほんとうの理由だろうと思う。少子化もあるが、サッカーが好きな子どもは、むしろ増えている。受け皿のサッカー部がちゃんと運営されれば部員は確保されるはずである。
 ともあれ、唐崎FCの誕生は、理想的な解決策だと思った。B中学とC中学のサッカーの好きな生徒は、放課後にA中学のグラウンドにきてA中学の先生の指導を受ける。
 B中学にはバレーボールに熱心な先生がいるとする。A中学とC中学のバレーボールをしたい生徒は、放課後にB中学の体育館にきてB中学の先生の指導を受ける。同じようにC中学にはテニスの好きな生徒が集まる。
 こういうようになれば、部員数不足と指導者不足と施設不足が一気に解決される。いろいろなスポーツにとって一挙三得である。これが地域クラブである。
 もちろん、問題がないわけではなし 校長先生は、他の学校の生徒が自分の学校の施設に入り込むのを喜ばない。事故が起きたとき、校長先生が責任を問われるからである。学校施設を管理する責任、部下の先生を監督する責任は校長先生にある。
 自分の学校の生徒の事故の場合は仕方がないが、他校の生徒に事故があった場合はやっかいである。

二重登録でいい?
 ところで唐崎FCはどこのチームと、どこで試合をするのだろうか。
 実はA中学には単独でチームを作ることができる数の部員がいる。熱心な指導者がいるからである。
 そこでA中学の生徒は「A中学校サッカー部」として中学校体育連盟(中体連)に登録して中学校の大会に出る。
 しかし、B中学とC中学の生徒は中体連の大会に出られない。単独の中学校チームとして出ようと思っても11人揃わないからである。
 唐崎FCとしてクラブユースサッカー連盟の試合に出る手はある。しかし、A中学の生徒は中体連とクラブ連盟との二重登録になる。
 「県内の中体連の試合は二重登録だっていいんですよ。うるさいことは言ってませんよ」というのが、この話をしてくれた人の説明だった。
 「それに中体連の大会といったって、年に2回しかないんです。全国大会の予選と新人戦だけです。それも勝ち抜きトーナメントだから、1回戦で負ければ、年に2試合しかできない」
 だから、地域のなかでクラブも学校もまぜこぜになってリーグ戦をする。たくさん試合ができるし、みんなが試合に出られる。補欠はベンチに座りっぱなしということはない。7人しかいないチームがあれば、相手も7人に減らして試合をするという。
 そのリーグのなかで二重登録にならなければいい。非公式戦だから、サッカー協会への登録なんか必要ない、ということだった。


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