「何をいまさら」という感じではあるが「サッカーの魅力」について考えている。このスポーツが世界でもっとも普及し、どこの国でも大衆に愛されるスポーツになったのはなぜか? 突き詰めてみると、よく分からない。読者の皆さんのお考えをお聞きしたい。
なぜグローバルに?
ワールドカップが日本で開催されることになったおかげで、これまで縁のなかった人たちも、にわかにサッカーに興味をもつようになった。そこで「サッカーはどんなスポーツか?」「サッカーの魅力は何か?」について書いてくれ、あるいは、しゃべってくれ、という注文がくるようになった。そういわれてみると答えはそれほど明快ではない。
二つの疑問がある。
一つは、このスポーツが「地球上のいたるところで行なわれるようになったのはなぜか?」という疑問である。
おおまかにいうと現代のスポーツには三つの源流がある。
一つは英国起源のもの。サッカーはその一つである。もう一つは米国起源のもの。野球、バスケットボール、バレーボールなどである。三つ目は民族スポーツ起源でオリンピックによって広まったもの。柔道はその典型である。そのなかで、最初に世界中に広まったのは、主として英国起源のスポーツだった。
現代のスポーツの発展は、そんなに古い話ではなくて、19世紀の後半から20世紀の初頭にかけてである。そのころ、大英帝国が地球上のあちこちに植民地を持っていたので、英国起源のスポーツが世界のいたるところに輸出された。
しかし、それはサッカーだけではない。たとえば、ラグビーはニュージーランドや南アフリカでは、もっとも主要なスポーツになった。クリケットは、インドやパキスタンでは非常に人気のスポーツになった。
なぜ大衆的に?
ただし、ラグビーやクリケットは限られた地域では人気スポーツになったが、ほかの地域にはなかなか広まらなかった。クリケットは、いまでも日本ではほとんど行なわれていない。
ひとり、サッカーだけが世界中のどの国でも行なわれるようになった。他のスポーツを差し置いて「なぜ、サッカーが?」というのが、一つの疑問である。
もう一つの疑問は「サッカーがもっとも大衆的なスポーツになったのはなぜか?」である。
20世紀の前半までに地球上の多くの国に普及したスポーツは、サッカーだけではない。陸上競技と卓球もいたるところで行なわれるようになったスポーツである。バスケットボールも、米国起源のスポーツとしては例外的に、急速に多くの国に普及した。
1960年代、日本でサッカーがあまり認められていなかったころに、サッカーが世界でもっとも普及したスポーツである事実を知ってもらおうと思って、ぼくは「国際サッカー連盟(FIFA)の加盟国数は国連の加盟国数よりも多い」という表現を、よく使った。
これには、ちょっとしたトリックがある。国連加盟は国家単位だが、FIFAへの加盟は地域単位のところもある。たとえば英国は、国連へは一つの国として加盟しているが、FIFAへはイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドが別々に加盟している。香港やマカオも別という事情があった。
なぜサッカーが?
トリックは、もう一つあった。
それは国際陸上競技連盟(IAAA)や国際卓球連盟(ITTF)の加盟国数との比較をしなかったことである。
陸上競技も卓球も英国を盟主に発展したスポーツで、英本土の4協会や当時は英国領だった香港やマカオは独立に加盟していた。加盟国数や世界選手権への参加数はサッカーとともに断然、多かった。
この二つのスポーツの加盟国数との比較をあえてしなかった理由は、普及の内容に大きな違いがあったからである。
陸上競技は、いわばエリートのスポーツで旧英国領の国々では上流階級がクラブを作り、国際組織へ加盟していたが、大衆的に人気のあるスポーツではなかった。卓球はだれにでも手軽にできるスポーツとして多くの国へ普及していたが、見るスポーツとしての人気はなかった。
サッカーは、ちょっと違う。
これは上流階級のスポーツではなく大衆のスポーツである。また手軽にできるスポーツであると同時に、「見るスポーツ」としても大衆に愛されているスポーツである。
というわけで「なぜサッカーが、他のスポーツを断然、引き離して大衆に愛されているのか」というのが「サッカーの魅力」についての第二の疑問である。
サッカーの魅力に関する二つの疑問について、いろいろな人に意見をきいている。
読者の皆さんのご意見もお聞きしたい。
|