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サッカーマガジン 2001年6月27日号
ビバ!サッカー

コンフェデ杯の運営をチェック
報道サービスの方法を考えよう

 コンフェデレーションズカップの試合は、日本と韓国で、そして日本では新潟、鹿嶋、横浜で行なわれた。運営面で2002年ワールドカップ準備の問題点をチェックするのが一つの狙いだっただろう。あぶり出された問題のーつは、報道関係者への対応の方法だった。

新潟のバス輸送改善
 はじめに前回の続きを書いておこう。
 コンフェデレーションズカップの日本代表第1戦は、5月31日に新潟で行なわれた。このとき観客のバス輸送がトラブルになった。 新潟駅南口からスタジアムのビッグスワンまでシャトルバスを運行したのだが、駅近くの乗り場まで、小雨のなか数百メートルの行列ができて1時間近く待たされた。キックオフに間に合わなかった人たちもおおぜいいたという話である。
 ところが、その次、6月2日の日本対カメルーン戦のときには、これはみごとに解決されていた。
 バスを増発し、ボランティアの整理員も増やした。土曜日だったからお客さんは早めに出掛けることができた。お天気もよかった。 いろいろな条件があったのだが、そのなかでもいいと思ったのは、駅の周辺にはり紙をして、スタジアムまで歩いていく道筋を案内したことである。さわやかなお天気だったから、歩いていくには快適だった。「たいした距離じゃないですね」と言っていた人もいたらしい。地元の新聞に書いてあった。
 うれしいのは、ぼくが前号に「スタジアムへは歩いて行こう」と書いたのが、たちまち実行されたことである。前号の発行日は試合のあとだから、新潟の人びとがぼくの記事を読んでくれたわけではない。ぼくの考えと新潟の人びとの考えが、たまたま一致したわけである。
 ただちに改善策を実行した地元の人びとに敬意を表したい。

ミックストゾーン
 試合のあとに、新聞記者たちは監督や選手の話を取材する。
 テレビでは、試合の直後に監督やヒーローになった選手がインタビューされるのが中継されるが、これは「フラッシュ・インタビュー」といって放映権を持つテレビ局の優先取材である。このあとに、一般観客の見えない「舞台裏」で記者たちの談話取材がある。
 多くの場合、試合後に双方の監督の記者会見がセットされる。これは監督も記者たちも席について、通訳がつく。日本で行なわれる場合は日本語の通訳もつく。
 しかし、コンフェデレーションズカップの場合は「記者会見」は行なわれなかった。その代わりミックストゾーンで監督が少し高いところにあがって質問を受けた。これはワールドカップと同じやり方である。
 ミックストゾーンは、選手たちが通り抜ける途中に設けられていて、記者たちが立ち入ることのできる場所である。選手と記者たちの間には仕切りがあるが、記者たちが選手を呼び止めて話を聞くことができる。ただし、選手が立ち止まってくれなければそれまでである。通常はチームの広報担当が配慮して、選手が立ち止まるようにしてくれる。ここでは、原則としては通訳はつかない。
 このミックストゾーンで、監督だけはFIFA(国際サッカー連盟)の広報担当がアレンジして、記者会見形式で質問できるようにしたわけである。
 監督が英語以外の言葉を話す場合には、英語への通訳だけがつく。

広報担当の役割
 なぜ英語だけかというと、このミックストゾーンの様子もテレビの国際映像で中継されているからである。
 この映像をテレビ局が放送で使うかどうかは別問題だが、ワールドカップの場合は世界各国のテレビ局のうちのどこかが使うだろう。そうなると生中継のなかに、わけのわからない言語、たとえば日本語が割り込んでくるのは時間のムダである。そこで英語だけに限定したわけである。テレビ局は英語から自国語への通訳を自局で用意すればいい。
 試合後の談話取材は「舞台裏」ではあるが、実は世界のどこかで、誰かが見ている可能性がある。取材の報道陣が仕事をするプレスセンターでも国際映像を見ることができるから、ミックストゾーンに入っていない記者たちも、たいてい見ている。だから、あまり変なかっこうをしているわけにはいかない。
 ミックストゾーンの会見を仕切っていたFIFAの広報担当は、髪を短く切り、ネクタイをして、きりっとしていた。映像は、いろいろな国に流れるのだから、アレンジ役が個性を主張してはいけない。無難なほうがいい。記者たちの質問を受ける前に、広報担当が一般的な質問を先にしたが、マス・メディアの訓練を受けた経験があるとみえて、質問の内容も態度もなかなかよかった。
 ワールドカップのような大会を運営するには、こんなことも考えなければならないわけだが、日本側の広報担当者はどうだったか? 紙面のスペースがなくなったから、ここでは触れないことにしよう。


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