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サッカーマガジン 2001年4月11日号
ビバ!サッカー

東京スタジアムの三つのよさ
地元の応援を期待できそうだ

 Jリーグの開幕と第2節の試合を新設の東京スタジアムで見た。交通の便がいい。住宅地に囲まれていて地元市民の応援を受けやすい。陸上競技のトラック付きの設計にしては比較的見やすい。お客さんの入りもよかった。「東京2チーム」が成り立ちそうである。

交通の便がいい
 新しくできた東京スタジアムは、東京西の郊外、調布にある。
 郊外といっても都心からそう遠くはない。一流のマラソン選手なら、ひとっ走りだ。スタジアムの前に「1964年オリンピック東京大会マラソンコース折り返し点」の標識がある。つまり都心の国立競技場から42・195キロのちょうど半分。金メダルのアベベや銅メダルの円谷幸吉は、ここまで1時間ちょっとで走ったわけである。
 Jリーグ2001の開幕日、勤め先のある兵庫県加古川市から駆け付けた。東海道新幹線で東京駅に着き、中央線の電車で新宿へ。京王電車の特急に乗り換えて飛田給で降りる。特急のもよりの駅は調布だが、試合のある日は、いちばん近い飛田給にも特急が臨時停車する。
 飛田給は以前は貧相な小さな駅だったが、見違えるように大きな橋上駅に改装されていた。
 駅からは歩いて5分もかからない。幹線国道の甲州街道を横断するが、これも見違えるように大きい歩道橋が新設されて、渡るとそのまま、まっすぐにスタジアムのなかに入ることができる。
 大きな団地都市のある多摩センターの方からも京王多摩線で調布に出ることができる。
 調布駅からはスタジアムへ臨時のバスも出ていた。
 北の中央線の武蔵境駅からの電車もスタジアムの近くを通っている。三鷹駅からもバスが出る。
 東西南北に電車と道路が走っていて、交通の便はすこぶるいい。

住宅地の中がいい
 Jリーグの第2節の試合は、自宅から歩いて見に行った。
 勤め先は兵庫県だが、東京の三鷹市に、もともとの自宅があって二重生活をしている。この2年間、三鷹の自宅のベランダからスタジアムが出来上がっていくのを眺めていた。
  わが家からスタジアムまで歩いてわずか25分である。半世紀以上にわたってサッカーを愛し続けたのを天が評価してくれて、わが住居の近くにスタジアムをつくってくださったのだと自己中心に解釈した。
 スタジアムは東京郊外の住宅地に囲まれている。調布市、三鷹市、府中市、それに多摩川を越えて稲城市がある。 
 こういう住宅地のなかのスタジアムもいい。国立競技場は都心にあって便利なようだが、周辺は高層ビルディングのオフィス街だから、住み着いている人びとは、そんなにはいない。地域の人びとに愛されるチームのホームは、都心ではなく、郊外の住宅地にあるのが本当じゃないかという気がしてきた。 
 FC東京はJ1にあがる前から、周辺の町の商店街に小さな幟(のぼり)を飾ってもらうなど、地元のサポートを確保するためのPRを続けてきた。東京ヴェルディは、稲城市と組んで市民のチームとして応援してもらえるように努力している。クラブハウスと練習グラウンドがある「よみうりランド」の所在地が稲城市だからである。 
 スタジアムの駐輪場はいっぱいだった。自転車で見にくることができるような場所にあるのがいい。

見やすいのがいい
 開幕日も第2節も、5万人収容の東京スタジアムの切符は売り切れだった。
 開幕日はスタジアム完成の記念のイベントがあり、石原慎太郎都知事の始球式もあった。それで東京都の方でも観客動員に力を入れたのだろう。周辺の市の自治体関係から招待された人びともいたはずである。発表は4万4030人だった。
 第2節はヴェルディの主催ゲームだった。これも動員作戦に力を入れたに違いない。沿線の駅には「入場券は売り切れです」とはり紙が出ていたそうだ。しかし、雨模様だったこともあってスタンドには空席もあった。ただで切符をもらった人は、雨が降ると来ないものである。それでも3万930人だった。
 新スタジアムのお披露目だったおかげではあるが、かなりのお客さんである。この人びとが、サッカーのおもしろさを知って「また見に行こう」という気になれば、東京の2チームとしては大成功である。
 東京スタジアムには、人工芝で覆ってあったが、陸上競技のトラックを作ることになっている。そのために観客席からフィールドまでが遠い。しかし、その割りには見やすかった。
 「横浜の国際競技場よりは、よっぽどいい」というのが、サッカー通の仲間の評価である。
 試合もおもしろかった。開幕試合はFC東京が延長Vゴールでヴェルディに逆転勝ち。第2節は東京ヴェルディが鹿島アントラーズに、これも逆転Vゴール勝ち。活発な攻めあいで、お客さんはおおいに喜んだ。


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