日韓? 韓日?「どっちだっていいよ」といいたいところだが、結構やっかいで解決が長引いている。日韓共催の2002年ワールドカップの名称を日本国内で、どう表記するかという問題である。とりあえず入場券申し込み用紙は、国名抜きで印刷されたが…。
国名は消したが
ことが大きくなったのは、韓国の組織委員会KOWOCのチョン・モンジュン(鄭夢準)会長の発言である。
2002年ワールドカップヘあと500日の1月16日に、ソウルの外国特派員クラブで、チョン会長は、共催の日本側のパートナーであるJAWOCを強い調子で批判した。
「ワールドカップは大統領が署名して保証した国家的行事だ。その正式名称を、日本国内だけであっても勝手に変えるのは、ワールドカップの性格を日本側が十分に認識していないからではないか」
問題は、2月15日から配布する入場券購入申し込み用紙に印刷される大会の名称の表記だ。日本側のJAWOCは、大会名称を「2002年ワールドカップ日本・韓国」と表示しようとした。
FIFA(国際サッカー連盟)のもとで両国が共催の協議をしたときに、大会名の表記に「コリア・ジャパン」の順で国名を付けることになっていた。このときに「開幕試合は韓国で、決勝戦は日本で」ということも決まった。韓国側は「決勝戦の会場を日本に譲るかわりに国名表記では韓国を先にしてもらった」と主張したと伝えられていた。
チョン・モンジュン会長は今回、「もし日本が決勝を譲るなら、考え直してもいい」と皮肉をこめて述べたという。
韓国からの抗議で、JAWOCはやむなく、入場券申し込み用紙から「日本・韓国」の表示をとりあえず削除することにした。
こだわりは消えない
日本側には「なんでいまごろ問題にするのか」という気持ちもある。というのは1年前の2月に作った日本国内向けのポスターに「2002年ワールドカップ日本・韓国」と表示してあるのに、そのときは何も問題にならなかったからである。
「順番なんてどうでもいいや」と思うのだが、こういうことへのこだわりは、国や人によっては、かなり強いものである。
新聞社で働いていたときに、日本と中国とネパールの三国で合同登山隊を組織する仕事を担当したことがある。
このときに、中国側が「登山隊の名称の国名表示は英語のアルファベット順にしよう」と提案した。ネパール側も日本側も、別に異議をとなえなかった。英語で並べるとCJNで「チャイナ、ジャパン、ネパール」の順になる。中国が最初になるので中国側はそう提案したわけである。われわれのほうは「どうでもいいや」というつもりだった。
日本国内での呼称はどうしたかというと「中国・日本・ネパール友好登山隊」と約束どおり表記した。新聞では長すぎるので、もっぱら「三国友好登山隊」と表記していた。
日韓の場合は、英語のアルファベット順だとJKとなって、タッチの差で日本が先になる。
そこで、アルファベット順のような根拠を探すかわりに、しっかりした取り決めが必要になったのだろう。
その取り決めに、韓国側はこだわっているわけである。
地元ファースト
日本側は「国内では、それぞれ自由に並べていい」という暗黙の了解があったと主張している。会議の席上でヨーロッパ連盟のヨハンソン会長が、そう発言したという話もある。
しかし、韓国側にとって、これほど強いこだわりのある問題であれば「暗黙の了解」では仕方がない。はっきりした文書に約束を残しておかなければならないところだった。
入場券の申し込みに関してJAWOCは、前にもFIFAと大きなトラブルを起こしている。これだけ失策を重ねてJAWOCの事務総長が辞任しないのは不思議である。
ところで、サッカーでは「ホームチーム・ファースト」という原則がある。日本と韓国との国際試合を東京でやる場合は「日韓戦」である。ホームチームを先に書く。ソウルでやる場合は「韓日戦」である。
昨年11月に新潟で「日韓サッカー・ジャーナリスト会議」を開いた。その第2回を6月にソウルで開く計画が進んでいるが、その名称は「韓日サッカー・ジャーナリスト・セミナー」の予定である。外交関係でも同じようなことがあって「日韓条約」が相手側では「韓日条約」になる。
そういうことが頭にあって、ワールドカップの呼称の場合も、日本国内で使う場合は「日本・韓国」でいいと思ったのだろうが、そうはいかなかった。
国内での非公式な使用は「日韓」を認める度量を韓国側に持ってほしいとは思うが、公式の文書類では、取り決めた以上は、日本側は約束を守るべきだと、ぼくは思う。
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