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サッカーマガジン 2000年12月13日号
ビバ!サッカー

2002年への二つの問題
メディアとスポーツを考える

 日韓共催の2002年ワールドカップをめぐるメディアとスポーツに関する二つの話題が同じ日の新聞紙面に載った。―つは日本でのテレビ放映権問題が決着したニュース、もう一つは、朝日新聞がワールドカップのオフィシャル・サプライヤーになったという話である。

テレビ放映権が決着
 京都の龍谷大学で毎週、金曜日に「スポーツ・メディア論」の講義を担当している。スポーツが新聞やテレビでどういうように扱われているか新聞やテレビがスポーツにどういう影響を与えているかを、学生たちといっしょに考える趣旨である。シドニー・オリンピックやプロ野球日本シリーズとともに、サッカーも一度は題材として取り上げたいと思っていた矢先に、格好の話題が11月22日付けの新聞に二つも出ていた。
 一つは2002年ワールドカップの日本でのテレビ放映権問題が、ようやく決着したというニュースである。
 手みじかに振り返ると、FIFA(国際サッカー連盟)が、ワールドカップのテレビ放映権を、スイスに本社があるISLという会社とドイツのテレビ企業のキルヒ・グループの連合体に売り渡したのが始まりである。2002年と2006年と合わせて2400億円ということだった。5年前の話である。
 それまではFIFAはサッカーを広く世界中の大衆に見てもらうのが目的で、ワールドカップを比較的やすい権利金で主として公共放送に任せていた。アジアではNHKを中心とするアジア放送連合が放映権を獲得していた。
 ところが、日韓共催の2002年大会から方針を転換し、より高い値段をつけたところに放映権を売り渡すことにし、オリンピックをはるかに上回る高額の権利金でISLが落札したのだった。

結果は妥当だが
 放映権を得たISLのグループは、これを各国に転売しなければならない。ISLは自分でテレビ放送をしているわけではなく、一種の代理店だからである。高い値段で権利を仕入れたのだから、売り値も高くなるのは当然である。日本にたいして250億円で売り込んできた。
 日本側はNHKと民放各社がジャパン・コンソーシアムという連合体を組んで「冗談じゃない、そんな高値ではとてもやれない」と突っぱねた。日本で開催する大会だから、日本で放映しなければならないが、NHKと民放各社が連合すれば、ほかに電波を出せるところはないと読んで頑張ったわけである。NHKのお偉いさんは「開幕の前日まで粘れば、相手は下りてくるほかない」とまで言ったという。
 ところが、これは考え方が古かった。多チャンネル時代になって、地上波のほかにデジタル衛星の電波があることを軽く見ていた。また、衛星波を使う新しいテレビ会社が有料チャンネルで放映する可能性を見過ごしていた。
 今年になって「スカイパーフェクTV!」が全62試合の衛星波での放映権を推定130億円で獲得した。NHKと有力民放各社以外にも対抗馬がいたのである。
 結論として地上波ジャパン・コンソーシアムは、40試合の放映権を推定63億円で獲得することで折り合いがついた。これが11月22日付けの新聞で報道された内容である。いろいろ問題はあるが、結果としては妥当なところだと思う。

朝日新聞の参入
 さて、11月22日付けの新聞に載っていたもう一つの話題は、ワールドカップのオフィシャル・サプライヤーの一つに朝日新聞が決まったというニュースである。
 いまや、スポーツのイベントに商業的なスポンサーがつくのは珍しくない。スポンサーにも種別はあるが、いずれにしてもワールドカップを広告宣伝に利用する権利を、お金を出して買うことに変わりはない。その一つに朝日新聞が参入したというわけである。
 「新聞も企業なんだから広告宣伝をするのは当然だ」というのも、一つの考えである。一方で「マスコミが取材先にお金を出して便宜提供を受けていいのか」という議論もある。朝日新聞は「取材上の便宜提供は受けない」と言っている。しかし、シドニー・オリンピックの公式スポンサーになった地元新聞が聖火リレーのトーチのデザインについて情報提供を受けて「特ダネ」にして批判を浴びた前例がある。そういうことは絶対に起きないのだろうか。
 朝日新聞は1980年代の終わりごろまで、長年にわたってアマチュアリズムを支持し、スポーツの商業主義を批判し続けてきた。いまになって、ころりとワールドカップの商業主義に加担するのは節操がないという気がする。 
 ぼくは新聞記者だったころに、偏狭なアマチュアリズムに反対し、商業主義も必ずしも悪くないという立ち場で記事を書いてきた。それでも今回の朝日新聞の節操のなさには驚いている。


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