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サッカーマガジン 2000年7月5日号
ビバ!サッカー

宮城スタジアムこけら落とし
交通不便で将来の活用に不安

 キリンカップの第1戦は、仙台郊外の宮城スタジアムだった。できあがったばかりのワールドカップ会場のこけら落としである。立派なスタジアムではあるのだが、山の上にあって交通不便。将来、どういうふうに、この巨大な施設を活用するのか、心配になってきた。

キリンカップ開幕戦
 ことしのキリンカップ開幕戦は仙台だった。2002年のワールドカップ会場になる宮城スタジアムの「サッカーのこけら落とし」である。
 前日に仙台入りし、地元の少年サッカーの指導者に、お話をうかがうために全日本少年サッカー大会宮城県大会の行なわれている小学校のグラウンドを訪ねた。ここで聞いた地域のサッカーの話は、別の機会に改めて紹介することにしたい。
 「どこにお泊りですか」と、地元の方に聞かれた。
 「仙台駅の近くのホテルです」
 「あすはスタジアムにどうやって行くつもりですか」 
 「新聞にシャトルバスが出ると書いてあったので、それを利用しようと思ってます」 
 「バスの切符は買いましたか。あらかじめローソンで買っておく必要があるんですよ」 
 えーっ、てなもんである。シャトルバスというから、その場で「ひょい」と乗れるものだとばかり思っていた。
 ホテルの近くのコンビニへ行ったら各種の前売券を販売する機械があって「宮城スタジアム行きバス」の切符をコンピューターが売ってくれた。午前10時仙台駅前発を買おうとしたのだが、すでに売り切れ。その1時間前の午前9時発になった。 
 所要時間は約50分ということだった。試合開始は午後1時30分なので早く着きすぎると思ったけれど仕方がない。新しいスタジアムと、その周辺の施設を、ゆっくり見物することにした。

シャトルバス
 これまで、外国でワールドカップを取材したときには、試合が夕方や夜にあっても午前中から出掛けたことは、しょっちゅうある。知らない土地で競技場への行き方も分からないし、スタジアムの様子にも不案内なので、用心をして、できるだけ早く行くことにしているからである。早めに出ることには慣れている。
 当日は、朝から雨だった。仙台駅前でシャトルバスの出発場所を探すのに20分以上かかった。まともな案内板が見当たらないのである。フランスでなくてよかった。仙台では日本語が通じたから、ふつうの路線バスの案内所で聞くことができた。
 しかし、2002年のワールドカップのときは、日本語の話せない人もたくさん来るだろう。シャトルバスといえば、次から次へとやってきて、次から次へと乗れるものと思っている人もいるだろう。バスの切符をコンビニのコンピューターで買うなんて、想像もできない人が大部分だろう。バス乗り場の案内は、エトランジェにも分かるように、あちこちに大きく、いろいろな言葉で掲示しておいてもらいたいものだ。あと2年、よろしく頼みまっせ。
 シャトルバスは、自家用車で行く人たちで渋滞するであろう本道を避け、裏道を迂回して、計画どおりに50分で着いた。さすがに地元のバス会社。プロである。実は、来年の国民体育大会のための施設で、国体に間に合えばいいのだから、新しい道路や周辺の駐車場は、まだ完成してないということだった。

山上の巨大施設
 バスは、標高100メートル近くあるんじゃないかと思われる山の間をぬい、その次の山のてっぺんを切り開いた場所にある巨大な施設群に着いた。体育館と室内プールが先に完成していたらしい。
 スタジアムは4万人以上を収容する巨大なものである。国民体育大会用だから陸上競技用の9コースのトラックがある。サッカーにとっては、あまり見やすくない。
 屋根はメーンスタンドとバックスタンドの上、3分の2くらいに張り出している。記者席の最前列にすわったら、屋根の前のふちぎりぎりのところで、それほどの風もないのに、霧雨が降り込んできて、びしょぬれになった。
 こんな山の上に、こんな使い勝手の悪い巨大な施設を作って、国体とワールドカップが終わったあとは何に使うのだろうかと思う。
 仙台には、ベガルタ仙台が使っている市営の競技場が別にある。これは地下鉄の駅のそばにあって、公共交通機関を楽に利用できる。仙台に大きなスタンドを持つスタジアムが二つも必要なんだろうか。県が市と張り合って県営競技場を作ったのではないかと邪推した。
 日本対スロバキアの試合は、4万5831人の大観衆で満員だった。
 結果は1対1の引き分け。スロバキアの選手は背が高い。雨で芝生がすべったので、高くボールをあげてくるスロバキアに有利で、低いパスをすばやくつながなければならない日本には不利だった。日本の守りが良かったと思う。


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