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サッカーマガジン 2000年6月28日号
ビバ!サッカー

モロッコでの日本健闘を喜ぶ
監督問題の会長一任は当然!

 セレッソ大阪が土壇場で優勝を逃して、関西在住者としては残念だった。しかし、そのセレッソ大阪の森島、西沢が日本代表としてモロッコの国際大会で活躍したのを喜んでいる。次から次へと、いろんなことが起きるが、揺れながらも、いいほうへ軌道修正されつつあるのではないか。

あわただしい!
 Jリーグの第1ステージは、最終節にセレッソ大阪が敗れ、横浜F・マリノスの優勝になった。5月27日である。
 その日、日本代表のトルシエ監督と強化推進本部の大仁邦彌副本部長はパリにいた。市内のホテルで約1時間会食したという。
 同じ日に日本サッカー協会は、東京の渋谷で理事会・評議員会を開いて役員改選を行なった。再選された岡野俊一郎会長は「日本代表の監督問題は私が全責任を持って決定します」と述べた。「会長一任」ということである。
 日本代表チームは、モロッコに飛びカサブランカでハッサン2世カップに出場した。6月4日にフランスと2対2の引き分け。PK戦に敗れて6日の3位決定戦にまわり、ジャマイカに4対0で快勝した。トルシエ監督は、いわゆる「契約延長」のために一つの結果を出した。
 モロッコから駈け戻ると、次の週はキリンカップである。第1戦は新たに完成した宮城の競技場である。ワールドカップに向けて、競技場建設は順調に進んでいるようだ。
 「なんと、あわただしいことか」と思う。東へ西へ、地球を駈けめぐりながら、日本全国をまたにかけて、日本のサッカー界は2002年へとかじを取っている。
 ただし、まっしぐらに進んでいるとはいえない。右へ左へと揺れ動きながらである。日本代表の監督問題は、とくに揺れ動きが激しかった。しかし、少しは落ち着いてきたような気もする。

モロッコでの試合
 モロッコの大会での日本代表の戦いぶりはよかった。テしビの画面で見ただけだが、日本のゴールは、どれもみごとだった。「決定力不足解消」「選手交代ずばり」と、新聞の見出しは、手のひらを返したようである。
 つい1カ月前にソウルで韓国と引き分けたときは、決定力不足を監督の責任にし、選手交代が効を奏さなかったのを監督の作戦能力欠如のように書いていたのは、どこの国の新聞だったのだろうかと思う。
 モロッコでの日本の戦いぶりがよかったことを喜んでいる。2年前のワールドカップで優勝したフランスと引き分け、グループリーグで日本が3敗目を喫したジャマイカに雪辱と、結果も、ともなっている。
 とはいえ、この結果をたちまち監督問題に結び付けるのは適当でない。ハッサン2世カップも、キリンカップも国際親善試合の一種であって、勝負を目標とするタイトルマッチではない。
 もちろん、参加国はお客さんに満足してもらえるように、勝つことをめざして、まじめに試合をする。しかしフランスは、欧州選手権を控えての「足慣らし」のつもりだろうし、ジャマイカも、はるばるやってきて「必ず勝とう」という動機は乏しいだろう。
 日本にとっても同じことで、これは今年のアジアカップから2002年までを見通した代表チームづくりの一過程である。試合内容のよさも、そういう方向から見なくてはならない。

トルシエの去就
 あわただしく通り過ぎていく一連のできごとのなかで、いちばん注目したのは、サッカー協会理事会の記事だった。新聞には片隅に「代表チーム監督問題は岡野会長に一任」と載っていた。
 「これが本当だ」と思う。
 人事の問題を、内部でいろいろあげつらうばかりか、外部のマスコミにリークするのは、百害あって一利なしである。そういうことをした人は、日本代表には、今後は関係させないことにしてもらいたい。
 ところで、トルシエ監督の去就は、これからが本番である。
 トルシエ監督は9月のシドニー・オリンピックと10月のアジアカップの指揮は、執ることになるだろうと思う。出場権を得たら、契約を延長することになっていたのだから、卜ルシエ監督には、この二つの大会の指揮を執ることを主張する権利もあるし義務もある。一方、協会の方としては、契約期間中の給料を支払いながら使わない理由はない。
 問題は、その後である。
 契約は完全に切れるのだから「解任問題」はありえない。新たに監督として誰と契約するかである。そのときは、トルシエ氏も当然、有力候補だろう。
 条件が折り合わなければ、おたがいに「再契約」をしなければならない義務はない。別に有力な候補がいなければ交渉はトルシエ氏に有利であり、ほかにも候補がいれば協会側に有利である。これは「取り引き」の問題である。取り引きの責任者は会長ひとりの方がいい。


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