Jリーグの前期は、激戦続きのすえにセレッソ大阪と横浜F・マリノスにしぼられた。関西のチームが終盤に一気に盛り上がったことを喜びたい。またセレッソ大阪の副島監督、FC東京の大熊監督のような新しい日本人の指導者が実績を残しはじめたことを喜びたい。
大阪フィーバー
Jリーグ前期の終盤、セレッソ大阪が首位に立ったとたんに大阪はサッカーフィーバーになった。ちょろちょろと燃えていた野火にガソリンを多量にぶちまけて、火勢が爆発したようである。
5月20日に横浜の三ツ沢球技場で行なわれた大一番で、セレッソ大阪は3対2で横浜F・マリノスを破り、横浜F・マリノスを首位から引きずりおろした。横浜F・マリノスは優勝を決められなかっただけでなく、自力優勝の望みもなくした。セレッソ大阪は逆に、最終節の5月27日に地元長居競技場で川崎フロンターレに勝ちさえすれば優勝である。
と、なったとたんに、大阪サッカーフィーバーがはじまった。
競技場に近い長居商店街では「祝セレッソ大阪優勝?」と印刷した先走り号外を出してお客さんに配った。これも近くの駒川商店街では、アーケードのなかにピンクのセレッソ大阪の旗を並べ立て、祝勝会の準備もはじめた。
「優勝、優勝と騒いでプレッシャーをかけてはいけないと思っていたが、もう大丈夫だろう」と、商店街の会長さんが話したそうだ。
女性知事で話題になった大阪府の太田房江さんは、ピンクのスーツを着て、夫婦おそろいで優勝決定の試合を応援に行くという。大阪市長の磯村隆文さんも「応援に行きたい」と言っている。
――というような話が、次から次へと関西の新聞には紹介された。ひょっとしたら、東京の新聞には載らなかったかもしれないので、ここでも紹介しておこう。
韓国がんばれ
そんななかで「これはいい」と思ったのは、大阪生野区の「生野フットボール連盟」の小学生チームが、こぞって応援に行くという話である。
生野区は、大阪市の中央部に近く商店がたくさんある地区である。ここには在日韓国・朝鮮人もたくさん住んでいる。
一方、セレッソ大阪では、森島、西沢など日本の中心選手が活躍しているだけでなく、韓国の盧廷潤、尹晶煥がチームをひっぱっている。
日本の選手と韓国の選手が、力を合わせて優勝をかちとる姿を、日本で生まれ育った韓国・朝鮮系の子どもたちに見せてやりたい。それが、日本の社会のなかで、お互いの民族のよさを認めあいながら、協力して生活していくための励みと参考になればいいな、と思った。「セレッソがんばれ!」は「韓国がんばれ!日韓友好がんばれ!」でもある。
というわけで、日本人だけがんばればいいというような偏狭な考えは持っていないのだが、セレッソ大阪が日本人監督の力で、ここまできたのは、やっぱりいい。
盧廷潤選手は「セレッソが力をあげたのは、副島監督の力だ」と話している。
Jリーグ発足以来、外国人のすぐれた指導者が来て、日本のサッカーに大きな刺激を与えてくれたのはすばらしかったが、一方で日本人の監督があまり伸びないのは残念だった。今年あたりから、新しい世代、あるいは新しいグループから出た日本人の監督、コーチが、実績を積んでいって欲しいと思う。
予想は大はずれ
2000年のJリーグ前期は、いろいろ収穫があった。よかったと思う。
とはいえ、ぼくの予想は大はずれだった。
シーズン前に「今季は大激戦、大混戦だろう」と書いた。それは、そのとおりになったのだが「上位、中位、下位のグループに分かれての激戦だろう」と予想したのは、まったく違った。
優勝は名古屋グランパスだと予想していたが、まるで見当違いだった。
ジュビロ磐田、清水エスパルス、鹿島アントラーズ、横浜F・マリノスあたりが優勝争いにからむだろうと思ったのは、ある程度はあたったのだが、セレッソ大阪は、ほとんど視野に入っていなかった。不明を恥じるばかりである。
もう一つ、予想外の活躍だったのは、FC東京である。シーズン前に「大熊監督はなかなかのもんだよ」と教えてくれた人がいたのだが、昇格していきなりの上位進出は無理だろうと見くびっていた。
開幕ダッシュで連勝した時点でも「逃げ馬の先駆けだ」くらいにしか思っていなかった。下位のチームは開幕当初に照準をあわせてコンディショニングをしてくる。優勝を狙うチームはシーズンを通しての調整を考える。だから、開幕当初に動きまくって番狂わせを起こしても、長くは続かないだろうと考えていた。しかし、そうでもなかったようだ。
というわけで、Jリーグの試合の内容は、なかなかよかったと思っている。
もうひとふんばりである。
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