Jリーグは混戦と激戦が続いて、試合は活気があると思うのだが、観客数は低迷しているらしい。発足当時のブームは異常だったにしても、もう8年目。とっくに正常な軌道にのっていなければならないはずである。各クラブは正しい方向で努力しているのだろうか?
観客減で焦り?
突然、東京の週刊誌の記者から電話がかかってきた。
「つまらない試合をしたら入場料を払い戻すという考えについて、どうお考えですか?」
「ええっー」てなもんである。
よくよく、聞いてみると、横浜F・マリノスの社長さんが、そういうアイディアをしゃべって、それがスポーツ新聞に載ったのだそうである。あいにく、ぼくは見落としていた。
さらに聞いてみると、F・マリノスの広報担当は「決まった話ではありません」と、もみ消しに大わらわだということだから、これは社長さんの思いつきか、冗談だったのかもしれない。
しかし、ひょっとすると、これは、Jリーグの観客数が下降しはじめていることへの、関係者の焦りの表れかもしれない、と思った。
関西に住んでいるから、Jリーグの試合を見るのは、神戸か、大阪か、足を伸ばしても京都になる。たまに東京に行ったときに国立競技場で試合があれば顔をだすこともある。
今シーズン、ぼくが見に行った試合で、あふれるほどの満員なんてことは一度もなかった。
4月に神戸のユニバーシアード競技場で行なわれたヴィッセル対ヴェルディの試合は、手元のメモで見ると2700人あまりである。4万人収容の大スタンドに、これでは豆をまいたようなものだ。京都の西京極でも、大阪の長居でも、5000人台がやっとである。プロとして運営するには、いささかさびしい。
スターがいない?
思うようにお客さんが集まらないのはスターがいないからだろうか、と考えた。中田英寿はイタリアに行ってしまった。名波浩も続いた。城彰二はスペインに行った。外国に行くことによって、ますますスター性は高まったが、日本での観客動員にはつながらない。
この3人がそろい踏みした3月15日の日本対中国の国際試合は、4万人近いお客さんで神戸ユニバー競技場が超満員だった。スターがそろえば、お客さんが集まる好例である。
では、この欧州トリオのほかにスターはいないのかといえば、そんなことはない。
関西のチームでいえば、セレッソ大阪の森島寛晃なんか、最近非常に評価が高い。ガンバ大阪の稲本潤一もなかなかの人気である。
横浜F・マリノスでは、中村俊輔のファンが、ぼくの周辺には多い。
ベテランにも、若手にも、スター候補はごろごろしている。
でも、森島にしろ、稲本にしろ、俊輔にしろ、サッカー愛好者のくろーと筋にファンが多くて、一般の人たちには、あまり知られていない。
一般の人たちに知られるようになるには、何かトピックが必要なようである。
5月13日のカズの100ゴールのときは、翌日いろいろな人から「カズはさすがだねえ」と声をかけられた。多くの人が、カズをめぐるいろいろなトピックを知っている。それを100ゴールというトピックで、また思い出したわけである。
いい点を売り出せ
ぼくが見た試合に関しては、Jリ−グが「つまらない」なんてことはない。
もちろん、激しい攻め合いもあれば、激しい守りあいもある。ドラマチックなゴールもあれば、0対0の引き分けもある。しかし、選手たちの技量や、チームの戦術は、Jリーグ以前にくらべれば、隔世の感がある。過密スケジュールで、疲れの見える試合が、ときにはないとはいえないが、概して内容はいい。
そこで、最初の話題に戻ると「つまらない試合のときは、入場料を払い戻す」という発想は、どこから生まれたのだろうか。
チーム経営の関係者が、自分たちの試合が「つまらない」と思っているのであれば論外である。しかし、優勝を争うチームが「つまらない」試合ばかりしているわけではないだろう。
われわれは、つまらない試合はしない。万一、お客さんが「つまらない」と思ったら「入場料をお返しする」という趣旨なら、自信のほどを表明したわけだから悪くはない。しかしPRのためには、こういうネガティブな表現は逆効果である。
プロの営業としては、自分たちの持っている「いいところ」を、どんどん一般の人たちに知ってもらうようにしなければならない。スター候補がいるのだから。それを売り出す「トピック」を考えたほうがいい。
F・マリノスは、中村俊輔がサッカーファン以外の人たちの間でもスターになるような方策を、くふうしてみてはどうか。
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