Jリーグのヴェルディが2001年から本拠地を東京に移すことが本決まりになった。もともと東京のチームとしてスタートしたクラブだから古巣へ戻ることができたのは結構なことだ。その本拠地となる都下調布市の東京スタジアムは、外観はほとんど完成している。
外観は出来上がり
気候温暖で人情豊かな兵庫県加古川市のアパートに住んでいる。この地の大学に勤めているからである。しかし、家族は東京郊外の三鷹市の自宅にいる。そこで月に1〜2回は東京へ行く。
三鷹の自宅は、武蔵野台地の南端の崖のうえにある。我が家のベランダから、はるかに富士山を望むことかできる。
富士山の左側、つまり東側の多摩丘陵には東京都稲城市の「よみうりランド」遊園地の観覧車が見える。ここに、かつての読売サッカークラブ、現在のヴェルディのクラブハウスと練習グラウンドがある。
富士山をはさんで右側、つまり西側にはクレーンが林立してただいま工事中の巨大な建造物が見える。これは2001年春に完成予定の東京スタジアムである。
東京に行くたびに、我が家のベランダから東京スタジアムの工事の進行状況を眺めていたが、外装部分はほとんど完成したようなので、正月休みに自宅へ戻ったさい、現場まで歩いて見に行ってみた。
住宅地のちょっと入り組んだ道をたどって行くと20分ほどで、スタジアム周辺の東端に出た。「うむ、これなら歩いて試合を見にいける」と、ほくそ笑んだ。もっとも、スタジアムの周辺はかなり広いので反対側の入り囗まで歩いたら、さらに10分ぐらいはかかるだろう。
2001年。つまり21世紀から、ここがヴェルディ(旧読売クラブ)とFC東京(旧東京ガス)の本拠競技場になる。
周辺人口は60万人
東京スタジアムの位置を説明しておこう。
東京の新宿から西へ、甲州街道をまっすぐ行って調布のちょっと先である。
1964年の東京オリンピックのときエチオピアのアベベが先頭を切って折り返したマラソンコースの記念標識がスタジアムのまん前にある。つまり千駄ケ谷の国立競技場から42.195キロの半分、約21キロの地点ということになる。
もっとも近い電車の駅は、京王線の調布駅の二つ先、飛田給である。スタジアムの完成に備えて橋上化工事中だ。駅からスタジアムは、歩いて5分もかからない。その道の拡張工事も進行している。甲州街道を横切る大歩道橋はすでに使用されている。
というわけで、東京スタジアムで試合をするための準備は、ちゃくちゃくと進んでいる。
このスタジアムの周辺は、かなりの人口を抱えている。所在地の調布市が約20万人、北側の三鷹市が約17万人、西側の府中市が約22万人。合計で60万人近くが直接の周辺人口である。そのほかに北側に小金井市、武蔵野市、東側に都内の杉並区、世田谷区。多摩川をわたって南側にヴェルディの練習場のある稲城市がある。多摩ニュータウンも遠くない。
京王線の電車でくれば、新宿から20分ほどだろう。南からも電車で京王相模原線で調布に出られる。北側の中央線方面からは、バスで来ることができる。道路拡張中である。
交通の便も悪くない。
愛されるクラブに
60万人の地元であれば、2つのチームのホームになるには十分である。欧州や南米には、20万人くらいの町に有力なクラブが2つ以上あるのは珍しくない。
一つのスタジアムを2チームが使うのもおかしくない。一つがホームで試合をするときに、もう一つがアウェーに出ていればいい。
もっとも、東京のような大都市圏に1スタジアム、2チームというのは、ちょっとさびしい。できれば隅田川の東の方にもスタジアムがあり、フーテンの寅さんに愛されるようなチームがほしい。
とはいえ、首都にJリーグのチームが生まれるのは結構なことだ。
もともと、Jリーグの前身の日本リーグでは、三菱、古河、日立、読売クラブが東京のチームだった。それをJリーグができるときに「スタジアムを持っていない」という理屈を付けて、近県の町に追い出してしまった。
読売クラブは、1969年の創設の時に、ぼくもかかわっていて、東京のクラブとして育てるために、苦しい思いをして東京都リーグの3部からスタートさせた思い出がある。詳しいことは、かつてビバ!サッカーにも書いたことがあるから繰り返さないが、再び東京に戻ることになったのは非常にうれしい。
とはいえ、都民に心から愛されるクラブになるためには、まったく新しい気持ちで出直さなければならないだろう。
スタジアム周辺の住民の一人として応援しようと思う。
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