前号の続きで、Jリーグ後期(セカンドステージ)の中断前までに見た試合のなかから、感想をまとめてみる、9月23日に第10節を終わったところで、清水エスパルスがトップ。伸び盛りの若手と個人技のいいベテランのバランスが取れている。守りが安定してきたのもいい。
沢登がいいぞ!
J1後期の前半戦の最後の試合――ややこしい書き方をしなければならないが、要するに9月23日のシーズン中断直前の試合で、エスパルスがヴェルディに2対0で完勝した。敵地、川崎の等々力競技場での試合である。これで「首位キープ、V見えた」というのが、新聞の見出しだった。
夏休み中は、東京にいて、首都圏の試合を見て歩いていたのだが、この試合のときは大学の授業再開のために兵庫県加古川市に戻っていた。試合はテレビで見た。
この試合は、このシーズンで、もっとも重要な試合だったのではないか、と思う。エスパルスは、これで優勝への足場を固め、ヴェルディはチーム再建の成果を飾る夢を断たれた。
エスパルスの2ゴールは、このチームの良さを象徴するものだった。
試合がはじまってすぐの2分、エスパルスの先制点は、右サイドから市川が突破し、みごとなクロスを入れたのが、ヴェルディのオウン・ゴールを誘ったものだった。ご存じ、市川大祐は19歳。エスパルスでは、とても生き生きとしている。日本代表のトルシエ監督は、オリンピック予選の初戦のメンバーに、なぜ市川を選ばなかったのだろうか?
2点目は8分。左寄りからの直接フリーキックを、29歳のベテラン沢登正朗が、カーブをかけたキックでゴール左隅へ吸い込ませたものだった。実は1点目の市川へのパスも、中盤から沢登が出したものである。
「沢登!いいぞ!」と叫びたい。
年齢と攻守のバランス
清水エスパルスの試合は、その前にナマで見ていた。9月15日、神戸のユニバーシアード競技場で行なわれたヴィッセルとの試合である。
この試合でも、前半33分に若い市川からのいいクロスが、久保山の先制点を呼び込んだ。
後半9分に同点にされたあと、21分の決勝点は、相手のパスを横取りした久保山のドリブル・シュートだった。2ゴールをあげた久保山由清は23歳。静岡学園高出身で横浜フリューゲルスから出身地に近い清水に戻ってきたストライカーである。
10番の沢登は、この試合でも中盤の王様だった。
日本代表のトルシエ監督は「現代のサッカーには、ゲームメーカーや古いタイプの10番はいらないんだ。プラティニの時代は過去のものだ」と言っている。それも一面の真実ではある。
しかし、古き良き時代を懐かしむ、ぼくとしては、沢登が攻めを作るエスパルスは楽しいね。トルシエ監督率いるオリンピック代表チームも、中田英寿が中盤にいるときのほうが、見る者には楽しい。
エスパルスの守りでは、23歳の森岡隆三がいい。中盤の攻撃的プレーヤーの伊東輝悦は25歳。ただいま抜群である。
というようなわけで、年齢構成は若手からベテランまで、バランスがとれている。地元出身のテクニックのいいプレーヤーが揃い、攻守のバランスもいい。
清水エスパルスは、優勝への本命である。
関西期待のセレッソ
ヴェルディは、エスパルスに敗れて第7節から4連敗。「改造中のヴェルディ」について感じていた不安が的中した。
狙いのあるサッカーを、一生懸命やっている。それはいい。でも、一生懸命に追い掛け回すことでカバーするサッカーをシーズンを通して続けるのは難しい。長続きするのは、エスパルスのようなテクニックのある選手による、バランスのいいサッカーである――と、ぼくは思う。
後期の前半を終わって、清水エスパルス、横浜F・マリノス、名古屋グランパスが上位にいるのは予想どおりである。
ダークホースは、サンフレッチェ広島だと思っていた。第3節に豪雨で中止になった試合があり他のチームより試合数が一つ少なかったので、一時は首位への可能性を隠し持った「隠れトップ」だった。しかし、第9節、第10節と連敗して後退した。
関西勢のなかで、ひそかに期待しているのはセレッソ大阪である。
9月18日に大阪長居競技場で、ヴィッセル神戸に5対0で勝った試合を見た。韓国の黄善洪がハットトリックを演じて、得点王へ大きく前進した試合である。チームの中心である中盤の森島寛晃が27歳。ぼくが注目した右サイドの加地亮が19歳。ここも若手とベテランの年齢構成がいい。
もう一人、よかったのは元日本代表の堀池巧、34歳である。後半34分にすでに3対Oとリードしてからの交代出場だったが、判断のいい出足は衰えていなかった。
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