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サッカーマガジン 1999年10月6日号
ビバ!サッカー

日本代表二つの国際試合
若手の未来が楽しみだ!

 9月の初旬に二つの国際試合があった。一つはU−22日本代表の韓国とのオリンピック予選壮行試合、もう一つはねらいがいま一つはっきりしない日本A代表のイランとの親善試合である。U−22日本代表は、イタリアからヒデが戻って、見どころのある試合をした。

U−22の王様、ヒデ
 若手のU−22日本代表の試合ぶりには「これからが楽しみだぞ」と思わせるところがあった。9月7日に東京の国立競技場で、韓国のU−22代表に4対1で勝った試合である。 
 親善試合だから、結果がどうということはない。4点も入ったのには幸運もあった。とはいえ、若いチームの試合ぶりは、なかなかよかったと思う。
 このチームの目標と試合のねらいは、はっきりしている。 
 当面の目標は、来年のシドニー・オリンピックへの出場権を獲得することである。そのためのアジア最終予選が10月にある。この試合は、そのための腕試しだった。 
 10月の予選を勝ち抜くために、イタリアに行っている中田英寿(ヒデ)を使いたい。そこで、ペルージャからヒデを呼び戻して加えたところに、この試合の最大の眼目があった。ヒデと他の若手選手とのコンビネーションを作っておくために、この試合は必要だった。その点で、この試合は大成功だったと思う。 
 ヒデは若手のなかで、みごとにリーダーシップを発揮した。フランスのワールドカップのときよりも格段によくなっていた。イタリアの激しいリーグでもまれて成長したためもあるが、若いチームのなかで完全に「王様」になって、思い通りに振る舞えたこともあるだろう。 
 中盤からのパスが早く、強すぎて走り出るプレーヤーに合わない場面はあったが、慣れてくれば合うようになる。この試合は、慣れるための機会だったのだから、これでいい。

W杯を展望して
 U−22の国際試合には、オリンピックを越えて、さらに、その先への展望がある。それは2002年のワールドカップヘ向けて、いまのチームを3年後の日本代表の土台にすることである。
 いまのU−22の日本代表のメンバーの多くは、オリンピック予選を突破し、来年のシドニーで経験を積み、さらにアジアカップの日本代表Aの中核になって、ワールドカップをめざすことになるだろう。
 もちろん、いま22歳以上の選手のなかにも3年後の日本代表に生き残る者がいるだろうし、逆に、もっと若い世代のなかから、先輩を押し退けて登場してくる新星が出てくることも期待できる。
 しかし、現在のU−22日本代表チームの個人個人の素質と技量が、3年後の日本代表チームを占う材料でないはずはない。
 そういう目で見ても、9月7日の若手の日韓戦は、楽しめるものだった。
 おおまかに言って、体格では韓国が上、体力では韓国がやや上、テクニックはほぼ互角といった印象だったが、状況を見て、すばやく展開するインテリジェンスでは、日本の選手がすぐれていた。一人、一人の個人の能力で、日本の若手は、まだまだ伸びていきそうな感じがした。
 19歳のゴールキーパー南雄太が再三ピンチを救い、中盤で稲本潤一、遠藤保仁が攻守に頑張った。21歳の中村俊輔がのびのびとドリブルを見せたのもよかった。若手の層は厚くなったと思う。

やりにくいA代表
 U−22の試合の翌日、9月8日に 横浜国際スタジアムで、日本対イランの国際試合があった。結果は1対1の引き分け。前日に比べて、試合のねらいも、チームの目標も、はっきりしなかっただけに、スタンドの盛り上がりは、いま一つだった。選手たちも、トルシエ監督も、やりにくかったに違いない。 
 この日の先発メンバーも、ほとんど全員が、2002年ワールドカップの日本代表になることを狙っているだろうし、その資格も十分ある。そういう意味では、2002年への候補選手を、二つに分けて2試合をしたといってもいいのだが、チームとして、めざすべき手近な目標がないだけに、やっている選手たちも、応援しているスタンドも緊張感が欠けていた。次の日の朝日新聞が「ヒデなし、名波なし…積極性なし」と、うまい見出しをつけていた。  
 イタリアのベネチアに行った名波浩が参加しなかったのを不満に思った人たちも多いようだが、名波としては無理からぬところだと思う。べネチアでレギュラーの座を取れるかどうか、微妙なときである。目標の明確でない日本代表の親善試合に戻ってくるよりは、プロとしての自分のチャンスを大事にしたいのは当然である。
 というわけで、トルシエ監督としては、U−22の資格がある中沢佑二を先発で使ってみたのが、せめてものねらいというところだろう。
 ただし、ぼく自身は、この試合を楽しく見た。新聞に書いてあるほど悪い試合ではなかった。


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