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サッカーマガジン 1999年9月1日号
ビバ!サッカー

全日本少年大会の様変わり
底辺のチームへの悪影響は?

 夏休みは少年サッカーのシーズンである。よみうりランドと清水の全国大会のほか、各地でいろいろな大会が開かれている。こういう大会を子どもたちは、のびのびと楽しんでいるだろうか。サッカーの楽しさを味わわせることが第一だと思うが、どうだろうか?

Jリーグ勢の決勝
 ヴェルディの練習グラウンドとクラブハウスがある東京郊外多摩丘陵の「よみうりランド」で毎年、8月のはじめに全日本少年サッカー大会の決勝大会がある。
 東京の読売新聞社でスポーツ記者をしていたころは、酷暑の夏を6日間、ここに泊まり込んで過ごしたものである。兵庫県加古川市にある大学に移ってからは、主催の読売新聞紙上で様子を知るだけになってしまったので、その後どんなふうに大会が変わっているのか、あるいは変わっていないのか、気掛かりである。
 今年の決勝戦は東京代表のヴェルディと千葉代表のレイソルで「史上初めて、Jリーグ下部組織同士の決勝戦」と新聞に書いてあった。優勝争いは様変わりしているようだ。
 決勝戦は、ヴェルディが3対0で勝ち「第12回大会以来11年ぶり2度目の優勝」とこれも新聞に書いてあった。
 しかし、11年前に優勝したときは「ヴェルディ」という名称ではなかったはずである。11年前の1988年はJリーグ発足前である。
 大会前の特集記事に過去の優勝チームの一覧表がのっていて、そこには第12回大会の優勝チーム名は、「読売日本SC」となっていた。だが、これも正確ではない。「読売日本サッカークラブ」は、Jリーグが発足するにあたってクラブを会社組織にしたときの「会社名」である。ヴェルディは、そのときにつけたチーム名である。
 11年前に優勝した少年チームの名称は「読売クラブ」だった。

大会史の裏ばなし
 ともあれ、プロをもつクラブのチームが優勝を争うようになったのを知って「時代は変わったな」と思った。
 それが「悪い」というつもりはない。プロの下部組織には、いい素材が集まっているだろう。いい素材同士が磨きあえば、ますます光り輝くようになるかもしれない。ただし、指導者たちが磨き損なわなければの話だが…。
 しかし、それで「いい」とばかりも思わない。弊害にも気をつける必要がある。この少年大会の裏側の歴史を振り返って、そう思う。
 この大会は、今年が第23回となっているが、実は33回の歴史を持っている。最初の10年は「全日本サッカー少年団大会」という名称で日本サッカー協会が単独で主催していた。 
 その当時のサッカー協会幹部の狙いは、実質的には小学校チームの全国大会にすることだった。ただ、文部省が小学校の対抗試合を禁じていたので「学校体育ではなく社会体育のスポーツ少年団の交流」という名目で、スタートさせたのである。
 その11年目に読売新聞社が広告スポンサーをつけて主催に加わって、名称を大胆不敵に変えてしまった。文部省の目配りが、ゆるんできたこともあったのだろう。
 このときに回数も第11回のところを第1回にリセットした。なぜリセットしたかというと「画期的な新しい大会を創設する」ことを、広告スポンサーに強調したいからだった。
  これは当時、広告関係者から聞いた話である。

選抜FCとの違い
 少年サッカー大会に、Jリーグ下部チームの時代が来つつあることを知って思ったのは「選抜FCと、どう違うか」ということである。
 全日本サッカー少年団大会は、当時の協会幹部が「小学校チームの全国大会」にするつもりでスタートさせた。小学校、中学校、高校、大学とサッカーの選手権を、学校制度に合わせた考え方である。
 小学校は地域ごとにあるから、多くのサッカー少年団は事実上、小学校チームだった。しかし、なかには小規模な小学校で、一つだけではチームができないので、近くの別の小学校といっしょに、1チームを作っているところもあった。
 また、小学校の施設を使って、少年サッカースクールを開いていて、別の小学校区からの児童も受け入れているところもあった。
 それは、それでいい。
 ところが、春の間は小学校単位でチームを編成し、夏前に地域の小学校から優秀選手を選抜して、少年団大会に参加するところが出てきた。33回の大会の歴史で最多優勝の記録をもつ静岡の清水FCが、その「はしり」である。これを「選抜FC」といい、真似する地域もあって、単独の小学校チームから批判が出た。
 Jリーグ下部チームは、形式的にも、実質的にも単独チームなので、形式的にだけ単独チームとして登録する「選抜FC」とは違う。
 しかし、こういうエリートチームの登場が、各地の子どもたちのチームの「やる気」を失わさせるのではないか、ということも心配である。


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