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サッカーマガジン 1999年8月11日号
ビバ!サッカー

Wカップのアジア枠を考える
AFCの強硬な主張は当然!

 2002年のワールドカップの出場枠が不満だといって、アジア・サッカー連盟(AFC)が、FIFAに反旗をひるがえした。 FIFA総会からの退場という強硬手段を批判する意見もあるが、ここは頑張るべきところだと思う。アジアから5チームという主張は当然だ。

アジアは広いな
 食卓のうえに置いてある地球儀を眺めて「アジアは広いな、大きいな」と、つくづく思った。西のかた、ウズベキスタン、カザフスタンを出ずれば、もうヨーロッパである。
 千数百年前の中国で「西のかた、陽関を出ずれば故人なからん」とうたった詩人がいた。敦煌(とんこう)の付近にあった関所を越えて西のほうに行くと「知ってる人はいないだろう」というわけである。ところが現代では、敦煌あたりには、日本人の観光客がわんさと押し掛けている。陽関を出でてタクラマカン砂漠を横断し、七千メートル級の山並みを越えたところが中央アジアのウズベキスタン、カザフスタンで、知人がいないどころか、ここはアジアのサッカーの仲間である。
 航空機が発達したから陽関なんてひとっとびだ、と思うのは実は間違いである。フランス・ワールドカップ予選のとき、日本はウズベキスタン、カザフスタンとあたって、アルマトイとタシケントで試合をした。このとき日本代表チームを乗せたチャーター機は、七千メートル級の山脈を避けてモスクワ上空経由で飛んだものである。つまり、ヨーロッパ経由でアジアへ行ったわけである。同じアジアがヨーロッパより遠いことだってある。
 地球儀を眺めて思うのは、アジアが横に広いな、ということである。地球は球形なので、どちらが縦で、どちらが横かといわれると困るのだが、ここはふつうの地図の書き方にしたがって、自転の軸をもとにして東西を横ということにする。

時差のほうが問題
 ふつうの地図は、3次元の球形の地球を無理に2次元の平面にして描いてある。
 そのために上のほう、つまり北のほうでは実際以上に横に広く見える。サッカーの組織ではヨーロッパに属しているロシアの首都モスクワは、はるか西のかたである。
 一方、南のほう、赤道付近では地図上の距離に比例している。それでサウジアラビアやスリランカは、ヨーロッパよりもはるかに近いという錯覚に陥って、同じアジアで当然だという気になる。
 ところが実際に出掛けるとなると、ヨーロッパのほうが、ずっと近いということになる。
  生身の人間が旅行するとき、距離以上に、からだにこたえるのは時差である。これは横に広いと昼と夜とが食い違って、かなり苦しむ。
 しかし縦に、つまり南北に旅行すると時差がないので非常に助かる。次のオリンピックはシドニーで、南半球のはじで距離は遠い。しかし、時差がほとんどないから、日本にとっては都合がいいだろうと思う。
 さて、地球儀をつくづくと眺めて思うのは、アジアが横に広いということである。つまり時差が大きい。
 サッカーで、ホーム・アンド・アウェーの試合をするとき、距離の問題もさることながら、時差の影響は非常に重要である。
 ホーム・アンド・アウェーだったら、おたがいさまじゃないか、という議論もあるだろうが、試合は双方ができるだけ、いいコンディションでできるようにしたい。

5地域に分ける
 というわけで、横に広いアジアを縦に分割して考えたほうが現実的である。
 そのつもりで地球儀を見ると、広大なアジアを5地域に分けてみるのがいいようだ。
 いちばん東に日本がある。地球儀の経度でみると、韓国、朝鮮民生主義人民共和国(北朝鮮)、モンゴル、中国の東部、香港、台湾などは東アジアでくくってもよさそうである。 
 タイ、マレーシアなどが東南アジアである。これは地球儀で見ると、ぼくが思っていたよりも西に寄っている。
 インド、バングラデシュなどは南アジアである。 
 サウジアラビアなどの湾岸諸国は地域としても比較的まとまっているし、民族的にも宗教的にも一体感を持っている。これも1グループである。
 そして旧ソ連邦から分離したウズベキスタンなどの中央アジア。これは旧ソ連邦という過去の政治的区分からみても、高い山並みに囲まれている地理的な状況からみても、まとめて考えていい。 
 この5地域は、すでにそれぞれ、地域の競技大会をもっている。サッカーだけでない、スポーツ全体としての組織分けができている。 
 というわけで本来、アジア5地域から一つずつの割り合いで、ワールドカップに出てもいいと、ぼくは思う。人口比や面積比からいっても当然である。アジア・サッカー連盟(AFC)が強い態度で頑張るのを、ぼくは全面的に支持したい。


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