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サッカーマガジン 1999年7月28日号
ビバ!サッカー

Jリーグの収支報告をみて
少なすぎるTV放映権収入

 欧米ではスポーツの放映権料が高騰しているが、日本はかやの外である。値段をつり上げている国際メディア資本の手は、日本にも伸びているらしいが、日本側のガードがかたい。でも、それでJリーグの収入が少ないのは、スポーツ界としては損をしているような気もするが…。

放映権収入22億円 
 「Jリーグのテレビ放映権収入は少なすぎるんじゃないか」
 1998年度Jリーグ収支報告という表を眺めていて、そう思った。
 総収入が79億9400万円だ。金額としては悪くない。Jリーグ発足前に比べれば大発展である。 
 内訳を見ると放映権料収入は21億8900万円である。 
 放映権料には、リーグが直接、管理運営する試合、たとえばチャンピオンシップやオールスターゲームなども含まれているだろう。
  しかし、主力はリーグの試合でなければならない。 
 そこで、放映権収入20億円余を、かりに1998年の18チームが行なったリーグ戦306試合で割ってみると1試合約700万円になる。 
 「これは安すぎるよ」と思う。
 もちろん、支払う側のテレビ局、主としてNHKには言い分があるだろう。
 まず第一に、全部の試合を中継するわけではない。中継した試合だけについては、もっと高くなる。 
 第二に、視聴率はそれほど高くない。NHKの衛星チャンネルでの放映が多いが、BSの視聴者数は増えつつあるとはいっても、まだまだである。 
 第三に、NHKの場合は、公共放送としてスポーツ振興のために協力しているので、損得ずくではない。放送する試合数も、出せる金額も、これくらいが精一杯で、これ以上は他のスポーツとのバランスからいっても出せませんよ、ということになる。

欧米は百億円単位
 Jリーグの放映権収入が「少なすぎる」と感じるのは、欧米の場合とくらべるからである。
 イングランドのプレミア・リーグは、1シーズンに行なわれる380試合のうち、60試合の放映権を1996年から4年間の契約でBスカイBという衛星テレビ局に売っている。総額は6億7000万ポンドである。日本円にしておよそ1300億円になる。年間325億円、1試合5億4000万円である。
 ドイツのブンデスリーガは、キルヒ・グループのケーブルテレビが、3年間5億4000万マルクで放映権契約をしている。約350億円である。
 イングランドのBスカイBのオーナーは、豪州出身で米国国籍のルパート・マードック氏だ。野球では米大リーグのドジャースを買収し、サッカーではマンチェスター・ユナイテッドに手を伸ばして話題になった世界のメディア王である。
 ドイツのキルヒ氏は、広告企業のISLと組んで、ワールドカップの放映権を2大会約2400億円で押さえた人物である。
 こういう国際的なメディアが、スポーツの値段をつり上げている。その狙いは、テレビの多チャンネル化で、番組が足りなくなってきたので、視聴率のあがるスポーツ番組を独占することである。
 「こんな無茶苦茶が、いつまでも続くはずはない。そのうちバブルが弾けるよ」という人もいる。
 そうだろうと思うが、日本のJリーグはバブルに乗りそこなって損をしているような気もする。

NHKの独占状態
 さて、Jリーグの収支報告に戻ると、収入のうち、もっとも大きいのは、協賛金収入の40億3200万円である。これは広告スポンサーからのお金だろう。
 いまJリーグの看板広告は、バックスタンド側のタッチライン沿い、つまり、いちばんテレビに映りやすい部分はリーグが一括して扱って、広告代理店に任せている。放映権収入もリーグが一括して扱うシステムである。ゴール裏の広告看板は試合のホームクラブの扱いである。 
 このようにJリーグでは、放送料収入も、広告料収入の大部分も、リーグに入ることになっている。しかし、こういう収入は本来はクラブのものである。クラブが試合を運営し、選手に給料を払っているのだから、それにともなう収益はクラブがもらわないと経営が成り立たない。 
 そういうわけで、Jリーグ収支報告の支出の部では、クラブへの配分金が47億7800万円でもっとも大きな部分を占めている。
  18クラブで割ると1クラブ平均2億6500万円になる。
 つまり放映権収入も、広告収入も、いったんリーグでプールしてから各チームに分けているわけだが、1クラブあたりにすると配分金は、いかにも少ない。
 なにしろ民放テレビが、ほとんど手を引いてNHKの独占状態になり競争原理が働かないのだから放映権料は上がらないわけである。 
 イングランドなみとまではいかなくても、放映権料収入が、もっと多くなる方法はないものかと思う。


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