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サッカーマガジン 1999年1月20日号
ビバ!サッカー

アジア大会を考える

 バンコクで開かれていたアジア競技大会のサッカーで日本は準々決勝にも進出できなかった。相手にはワールドカップ代表がいるのに、こちらは21歳以下なんだから仕方がない、とも思うが、フル代表で出ないのはアジアのタイトルを軽視しているものではないか、とも思う。

タイトルが多すぎる
 バンコク・アジア大会のサッカー決勝は、イランとクウェートの争いだった。暑いところで試合をするとアラブ湾岸諸国は強い。
 東アジア勢では中国がベスト4に入った。中国は準々決勝ではトルクメニスタンに勝っている。
 そのトルクメニスタンは、1次リーグでは韓国を破った。旧ソ連邦の中央アジア諸国は、4年前の広島大会から国際舞台に登場してきて、ウズベキスタンが優勝している。
 地元のタイは、準々決勝で韓国に勝った。延長にはいってからのVゴール勝ちで、6万人の大観衆をわかせたらしい。もともとサッカーの盛んな国である。東南アジアは、ちょっと低迷していたが、また持ち直してくることを期待したい。
 日本が1次リーグで対戦したインド、ネパールなど南アジア諸国は、なかなかレベルがあがらない。インドは大国なんだから、なんとかてこ入れしてほしいと思う。
 というように、アジアのスポーツは5つに分かれている。東アジア、東南アジア、南アジア、アラブ湾岸、中央アジアの各地域である。
 これをまとめて4年に1度のアジア競技大会がある。このほかに東アジア競技大会、中央アジア競技大会などのブロック別総合大会もある。
 サッカーだけのタイトルでは、アジア・カップがあり、ワールドカップ予選があり、オリンピック予選がある。
 4年間に、これだけのタイトルが混み合ってくると、息が続かなくなりそうである。

日本は21歳以下
 タイトルが過密だということもあって、アジア競技大会のサッカーを23歳以下の競技会にしようという案が何度も出ているが、なかなか実現しない。
 というのは、開催国にとっては、本格的な代表チームでレベルの高い試合をやってもらわないと、大会の権威にかかわるし、観客動員にも響く、ひいては入場料やスポンサーからの収入に影響するからである。
 日本は今回のバンコク大会には21歳以下の代表を編成した。過密日程を考えれば止むを得ないとも言えるが、一方では、アジアでもっとも歴史のある大会を軽視し、開催国タイの迷惑を顧みない自分勝手な行動だと非難されても仕方がない。
 日本が21歳以下でチームを編成したのは、過密日程対策というよりもオリンピック予選対策だった。
 オリンピックは原則としては23歳未満の大会になっている。そこで次の年からはじまる予選に備えて、その代表候補に経験を積ませようと考えたわけである。
 建前としては、この考え方に、ぼくは三つの点で賛成しない。
 第一は「オリンピック至上主義」の影響を残した考え方である。サッカーにとって、オリンピックはそれほど重要な大会ではない。
 第二に「中央集権強化生義」である。英才を中央に集めて一体のチームとして鍛えるやり方である。
 第三に「アジア軽視」の表れである。アジアの仲間たちとの付き合いを重視して、礼を失しないようにすべきである。

戦術能力に問題?
 とはいえ、若手に厳しいタイトルマッチの経験を積ませることは、絶対に必要である。それに2002年のワールドカップ日本開催を控えている。それまでに若手を伸ばそうという期限付きの狙いもあるから、現実論としては中央集権強化を焦る方針を理解できないわけではない。
 しかし、本当のやり方は違う。
 各地のいろいろなクラブから若手が育ってきて、その若手を代表チームに積極的に加えていくのが本筋である。これは、ぼくの長年の持論であり、かつ日本サッカー協会から皆に無視されてきた考え方であるが、ここでも、しつこく繰り返し主張しておくことにする。 
 ところで、日本の21歳以下の代表のバンコクでの戦いぶりは、どうだっただろうか。
 現地へ行くことができなかったので、テレビで見ただけであるが、選手たちの戦いぶりは悪くなかった。テクニックとファイティング・スピリットの点では、年長の他国の選手たちに、ひけをとらなかった。
 ただ個人の戦術的な判断力の速さでは、テレビの画面で見るかぎり、いささか問題があった。2次リーグ初戦で韓国に2対0で負けた試合のとき、中盤の稲本潤一が、よく画面に登場していたが、ボールを持ってから周りを見て、パスを出すところがなくて、つぶされていた。暑さで集中力が途切れていたのか、味方の動きが悪かったのか、そのへんはテレビでは分からない。
 チームとしては、暑さ対策、戦術、戦法に問題があったように思う。


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