Jリーグが6年目で行き詰まったことは明らかだ。「地域に根ざしたクラブ組織で」と高い理想を掲げたところで、一つ一つのクラブの経営が成り立たなければ空念仏である。立て直しのポイントは、それぞれのクラブが自分の努力で経営できるように、構造を改革することである。
クラブ、巣立ちのとき!
ツバメのヒナは巣のなかで口をパクパク開けていれば、親鳥がエサを運んで来てくれる。それが、いつまでも続くのであれば、ヒナは自分でエサを取りに行こうとはしないだろう。ヒナが育ってくれば、親ツバメは自力で飛ぶことを教え、自分でエサを取りに行かせるものである。
ツバメのヒナと同じように、Jリーグのクラブにも親鳥が2羽いて、せっせとエサを運んでくれた。母鳥は親会社で、父鳥はJリーグである。
ところが6年目になって、母鳥は不況の嵐に巻き込まれて、思うようにエサを運べなくなった。それがいま、Jリーグで起きていることである。ベルマーレだけでなく、どのクラブも生みの親の母鳥、つまり親会社の体力は弱ってきている。
そうなると頼りは父鳥である。この父親は精力家だと自分では思っていて、たくさんエサを集めてきて、18個の巣に配給できると思っていたらしい。父鳥の名前はJリーグ・チェアマンだ。
Jリーグでは、バックスタンド側の正面にある看板広告はリーグの収入になっている。またテレビの放映権料もリーグが一手に握っている。さまざまな商品化権も、当初はすべて一括管理してグッズで大儲けしようという勢いだった。
その儲けは、リーグ運営の経費を差し引いて、各クラブに分配するわけである。ヒナドリは口をパクパク開けていればいい。
でも、このやり方は、いつまでもは続かない。ヒナが巣立ちできるように仕向けなければならない。
自力で稼ぐ仕組みを
父鳥が分配してくれるエサの量は年を追うごとに少なくなってきた。看板広告も、不況の風で倒れかかっているし、テレビの放映は民放がほとんど手を引いて「薄謝協会」といわれるNHKだけになってしまった。商品化権を一手に扱っても、グッズが売れなければしようがない。
もう、ヒナがそれぞれ自力で飛んで自分でエサを取ってくるようにしなければならないときである。つまりJリーグの各クラブが自力で収入を上げられるように、自主運営を拡大しなければならない。
いまでも、入場料収人は原則としてクラブのものである。またゴール裏の看板は、ホームのクラブが集めている。しかし、それだけでは不十分だ。
不十分なだけでなく、口を開けていればエサが落ちてくる仕組みであれば、自分でエサを取る熱意が薄くなりがちである。「もうエサはあげないよ」と言われて、はじめて巣から飛び立つようになる。
このさい、Jリーグがお金を集めて分配するシステムをやめて、クラブが自分で稼ぐ部分を拡大するように提案する。
つまり、看板広告の権利も、テレビの放映権も全部、クラブのものにするわけである。そうすれば、クラブは、自分で飛び立てるようになってエサを探す努力をする。またヒナ鳥同士が競争してエサの縄張りを拡大しようとする。
自主的な努力と競争が発展を生むものである、そういう仕組みにJリーグを変えなければならない。
護送船団の崩壊
いままでのJリーグの運営は、護送船団方式だった。
戦争中に輸送船がグループを作って武器や物資を運ぶ。輪送船は無防備だから、そのまわりを軍艦が取り囲んで敵の潜水艦の襲撃を防ぎながら進む。これが護送船団である。
ひとかたまりになって進むのだから、速度はいちばん船足の遅い船に合わせる。いい船の性能を犠牲にして弱い船を守るシステムである。
大蔵省が日本の金融機関を守ってきたのが、この方式だった。みんな横並びに守って、どこもつぶれないようにしていた。しかし金融ビッグバンで、この方式は崩壊して北海道拓殖銀行も、長期信用銀行も、山一証券も行き詰まった。
Jリーグの運営は、護送船団方式だ。リーグがまとめてテレビ放映権や看板広告を扱い、その収益を配分して船団全体を守ろうというやり方である。
Jリーグの発足を推進した現在のチェアマンが、護送船団方式を採用したのはなぜだろうか。
一つの理由は、プロ野球の「巨人」のような存在がJリーグにできるのを、おそれたことだろう。マスコミを背景に持ち、全国的に宣伝能力の高いクラブが突出して中心になるのを防いだのだと思う。つまり性能のいい船を抑えて、速度の遅い船を守ろうとしたわけである。
性能のよかった船はエンジンがさびついて、船主は船を親戚に譲ってしまった。もともと不安があったヒナは、親鳥から見離されて巣の外に放り出されてしまった。
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