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サッカーマガジン 1998年12月23日号
ビバ!サッカー

Jリーグ゙はどうなる(3)
−選手の給料が高すぎた−

 Jリーグで選手の大量解雇と大減俸の嵐が吹き荒れている。どのクラブも赤字で経営困難だというのだから、選手に高給を払えないのは当然だろう。もともと、軒並みに高給を払いすぎていたので、今ごろになって、あわててリストラをはかるのは遅すぎるのではないか。

ラモスの引退に思う
 2年くらい前にラモス瑠偉からもらった年賀状に「燃えつきるまで」と書いてあったのを思い出した。ラモスが、引退を表明したのをきいて「本当に燃えつきたんだろうな」としみじみ思った。
 41歳という年齢を考えれば、もちろん引退してもおかしくない。よくここまで燃えたものだと思う。
 しかし一方で、ヴェルディが大リストラ作戦を敢行しつつあるときだけに「ラモスの引退も、その余波かな」とも思った。
 かりにラモスが「もっとサッカーを続けたい」と言ったにしても、ヴェルディは、これまでのような高給で契約することはできないだろう。大幅減俸に甘んずるよりも、きっぱりと引退したほうが「ラモスのためだろう」という気がした。
 ヴェルディが選手の給料引き下げに乗り出したのは1年前からである。1年前に契約切れになった選手の再契約に際しては、きびしい条件を突き付けた。
 しかし、複数年契約をしているスター選手は契約期間が残っているから減俸するわけにはいかなかった。そういう選手には、契約が切れるのを待って対応した。つまり「大幅減俸に応ずるなら再契約をする、いやなら、どうぞご自由に」というわけである。カズも、そのひとりで「米国のプロにいくならどうぞ」ということになった。もっとも米国行きのほうは、思い通りにはならないらしい。
 ヴェルディの功労者であるラモスには、ここが引退の潮時だった。

報酬の運・不運
 ラモスについてだけ言えば、選手生活の終わりごろになって、億単位の高給をもらえたのは決して不当ではなかった。
 ヴェルディの前身の「読売サッカークラブ」が、日本でプロ・サッカーが認知されるのを夢見ながら孤軍奮闘していたころ、ラモスたちの給料は非常に安かった。
 恵まれない条件のなかで、ラモスたちのアイディアと技術で日本のサッカーに施風を巻きおこし、当時の日本リーグや天皇抔で優勝しても、なかなか給料は上がらなかった。クラブにろくな収入がないのだから、給料を上げられないのは止むを得なかった。
 そのころ、クラブの役員たちの言い訳は「プロが認められるまで待ってくれ。日本でプロが認められるように頑張ろう」というものだった。
 そういう事情を考えれば、Jリーグができたあと、ラモスが高給をもらったのは「不公正」ではない。過去の功績に対しても報われて然るべきである。
 Jリーグ発足前に選手生活が終わった功労者は報われなかったじゃないか、という議論も成り立つ。ヴェルディでいえば、ジョージ与那城や小見幸隆たちは、ヴェルディの栄光の基礎を築いた功労者だが、それほどには報われなかった。
 人生には運不運がある。これは止むを得ない。
 しかし、その後の選手たちは、異常な高給をとっていたと思う。これは運、不運の「幸運」のほうである。「幸運」の行き過ぎが是正されても止むを得ないのではないか。

発足時の愚策のツケ
 ヴェルディは柱谷哲二、三浦泰年らを放出するという。ベルマーレも日本代表の呂比須ワグナーたちが退団することになりそうだ。
クラブに高給支払いの能力がなく、選手がそれに不満であれば、選手は新天地を求めるほかはない。新天地があるかどうかは、また別の問題である。
 ところで、なぜ異常な高給が生まれたかについては、このあたりで冷静に検討してみる必要がある。
 最初のきっかけは6年前のJリーグ発足のときだった。にわかにプロチーム作りに乗り出したクラブが選手の掻き集めに奔走しはじめて、引き抜き合戦が始まる気配だった。引き抜かれるほうは引き止めのために、高額の給料を提示するはめになった。
 当時「カズに1億円」という報道が、それに火を付けたので、ヴェルディが元凶のようにいう意見があるが、スターの引き抜きが起きかねない状況を作ったJリーグのほうにも大きな責任がある。
 これは「選手の保有権」を、どのような形で、どの程度、クラブに認めるべきかという問題である。本格的なプロが、はじめてスタートするのだから、どの選手とも勝手に契約できるというのでは、掻き集め合戦が起きるのは当然である。これまで在籍していたクラブに対して、その選手と優先的に契約する権利を認めないと引き抜き合戦になる。
 「保有権」は、労働の自由や独占禁止法ともからんで難しい問題ではあるが、Jリーグ発足のときの愚策(無策?)のツケが、6年後にまで影響したのだと、ぼくは見ている。


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