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サッカーマガジン 1998年12月16日号
ビバ!サッカー

Jリーグはどうなる?
−赤字の責任を追求する−

 Jリーグの騒ぎは、決してフリューゲルスとヴェルディだけの特殊な問題ではない。6年前にさかのぼって、Jリーグがスタートしたときの政策が正しかったのかどうかが問われている。いまからでも遅くない。政策の誤りをただすために、危機の原因を一つずつ追求しよう。

☆危機の原因は構造に
 Jリーグ6年目の危機が表に出た発端は、フリューゲルスが同じ横浜のマリノスに吸収合併されるという読売新聞の報道だった。
 続いてヴェルディから読売新聞社が手を引いて、経営を日本テレビに一本化することが、日本経済新聞の特ダネになった。
 その余震で、ベルマーレ平塚も親会社のフジタ工業がピンチなので新しいスポンサーを探しているという報道が、まず朝日新聞に出た。
 11月24日放映のNHKの「クローズアップ現代」では、アビスパ福岡も大赤字で福岡市がもてあましていることが取り上げられた。
 マスコミの報道合戦が2週間の間に燃えさかった感じである。
 マスコミが取り上げてくれる間はまだいい。大衆が関心を持っている証拠だからである。やがてマスコミも大衆も忘れてしまって「Jリーグって何だったっけ?」ということになりかねない。そうなったら「危機」どころかJリーグは「おしまい」である。
 危機の本質は、全日空や読売新聞の無理解でもなければ、バブルがはじけたフジタ工業のバランスシートでもない。クラブが赤字を出し続けるという仕組みにある。つまりJリーグ自身の構造の問題である。
 Jリーグが、21世紀に生き残ろうと思ったら、自己改革の手を打たなければならない。川淵チェアマンは「読売には、長い間サッカーを支援していただいてありがとうといいたい」などと言っている余裕はないはずである。

☆企業が手を引くのは当然
 フリューゲルスから手を引いた佐藤工業は9月の中間決算で、税引き後利益が11億円の赤字だった。通期では400億円以上の赤字になる予想だという。フリューゲルスヘは過去5年間で25億円を注ぎ込んだので、支援は「もう限界だ」という。
 主力スポンサーだった全日空のほうも、航空業界の国際競争の激化で経営が苦しい。関西空港発着の国際線は別会社に移管する計画が進んでいるという話である。本業がたいへんなんだから、サッカーチーム支援どころじゃないわけである。
 読売新聞も、フジタ工業も、福岡市も、台所が苦しいのは、ご同様だろう。なにしろ不景気は世界的なのだから。
 そんなときに「企業はスポーツ文化を理解しろ」「自治体が地域のスポーツを支援するのが当然」と、お題目を唱えるのは、株主やタックスペイヤーのお金を扱ったことのない文人の寝言である。
 とはいえ、サッカークラブ自体の経営が黒字であれば、親会社のほうは本体が赤字でも、クラブを放棄することはない。
 また、支出に見合うだけの宣伝効果があれば、スポンサーも手を引くはずはない。
 というわけで、問題はサッカークラブ自体の経営が大赤字だというところにある。これはフリューゲルスやヴェルディやアビスパだけの話ではない。
 それぞれのクラブが自前で黒字運営できるような構造にすること――これが根本である。

☆赤字の責任は誰に?
 クラブの経営を黒字にするには、収入を増やすことと、支出を抑えることの両面がある。ここでは、まず収入の話をしよう。
 サッカークラブの収入には、二本の柱がある。
 第一は、入場料収入である。これは、クラブのもっとも基本的な収入である。しかしJリーグの1試合平均入場者数は、2年目の1994年度の1万9000人余がピークで、5年目の昨年度(1997年度)は1万人余と、ほぼ半減した。これは各クラブの営業努力が問題である。
 第二はテレビの放映権料である。いま、スポーツのテレビ放映権料は世界中で「うなぎ登り」である。テレビの多チャンネル化にソフト(番組)の供給が追い付かないので、高い視聴率を稼げるソフトとしてスポーツの価値が上がっているからである。
 ところがJリーグのテレビ放映権料収入は、2年目の1994年度から全体で20億円前後で推移している。「右肩下がり」ではないからいいじゃないか、という考えもあるだろうが、世界的には急激な「右肩上がり」であるのに、日本だけが水平線というのは問題である。 
 さらに問題なのは、3年目から民放テレビがほとんど撤退し、代わって肩代わりしたNHKの独占状態になっていることである。無競争で独占を許しているようでは、収入増は望めない。テレビの放映権は、リーグが一手に握って扱っているので、これはリーグの責任である。
 というわけで、収入についてはクラブとリーグの両方に責任がある。


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