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サッカーマガジン 1998年9月23日号
ビバ!サッカー

W杯の交通・輸送対策(一)
−2002年に向けてD−

 フランス大会の経験をもとに、日韓共催のワールドカップを考えている。先週は日本代表監督の問題を考えるために中断したが、再び2002年に戻ることにする。ワールドカップは多くの都市に分散して開催するので交通・輸送対策は特別に考える必要がある。

☆オリンピックとの違い
 日本も韓国も、オリンピックやアジア競技大会を開催した経験がある。日本は冬のオリンピックも、つい先ごろ長野で経験した。大きな国際競技会には慣れている。だから日韓共催のワールドカップも大丈夫だ、といいたいところだが、ワールドカップとオリンピックは同じ4年に1度のスポーツの祭典でも、かなり性質が違う。とくに交通・輸送対策はまったく違うので2002年対策には別の考え方が必要である。
 オリンピックは、多くの競技を一つの都市で実施する。サッカー競技だけは別の都市に会場を分散することがあるし、ボートやヨットは離れた場所で孤立して行なわれることが多いが、原則としては1都市での開催を建前としている。夏の大会の場合は、40近くのスポーツを一つの都市のなかで行なうことになる。
 したがってオリンピックの交通・輸送は、その都市のなかがたいへんである。8千人くらいの各国選手団を、同じオリンピック村に泊めるとなると、村から競技場と練習場への往復が大仕事になる。一つの都市のなかで、あちこちに、いろいろな競技会場がある。それぞれへ選手たちをバスで警護しながら運ばなければならない。
 ワールドカップの場合は、会場は全国に分散している。したがって遠距離輸送が問題になる。しかし、チームの数も役員選手の人数も少ないから、選手たちの輸送は、それほど、たいへんではない。
 むしろ、サポーターや報道関係者の移動のほうが、たいへんである。

☆TGVの威力に驚嘆!
 1970年のメキシコ大会以来、8回連続でワールドカップの取材をしてきたが、国内の移動に関しては今回のフランス大会が最高だった。
 というのは、フランスの鉄道の新幹線であるTGVが、実に便利で快適だったからである。
 フランス大会の会場都市は、パリを中心に放射状に広がる鉄道の沿線に分散していた。パリから各都市には、TGVで簡単に往復することができた。だから、パリの屋根の下に宿をとって、いろいろな都市に試合を見に行くことができた。
 とはいっても、実はフランスに出掛ける前には、TGVが、これほど便利だとは知らなかった。地方都市には飛行機で行ってホテルを探して泊まるつもりでいて、着いた当初はそうしていた。列車は飛行機の予約がとれないときにだけ利用するつもりでいた。
 ところが現地に行ってから、友人のカメラマンが、パリから試合ごとにTGVで往復するのが便利で安上がりだということを教えてくれた。それで10日くらいたってから方針を変えて、できるだけパリからの列車による往復に切り替えた。
 とはいえ、飛行機が不都合だとばかりは言えない。ツールーズとマルセイユの場合は、シャトル便が1日に何便も往復しているので、料金の問題と飛行場からの距離を別にすれば、それほど不便ではない。
 しかし、夜9時からの試合の場合には、試合が終わったあとの深夜の航空便はない。だから、どうしてもホテルの手配が必要になる。

☆北海道と九州は問題?
 パリから列車で往復する場合、試合は午後か夜だから出掛けるのは当日の午前でいい。パリから遠いツールーズやマルセイユでも5時間か6時間である。
 帰りはちょっと問題がある。
 夜9時からの試合の場合、ナントのようなパリから、そう遠くない町では、試合後に深夜のTGVで帰るとパリに着くのが午前3時過ぎになる。これは早すぎて都合が悪い。地下鉄がまだ動いていないからである。ホテルまでタクシーで行くことになるが、その列車から降りたお客さんがみな、眠気をこすってタクシー待ちの長蛇の行列に並んでいる。
 これはつらいと思っていたら、パリのメディアセンターの旅行エージェントの人が「そういうときは帰りは寝台列車のほうがいい」と教えてくれた。
 寝台列車は早朝、地下鉄が動きはじめたあとにパリに着く。ホテルに戻り、朝食をとってから、またひと眠りすると気分がいい。
 ところで2002年の日本の場合はどうか?
 日本も新幹線網は、かなり整備されている。東京を中心に考えて、東北新幹線の仙台、上越新幹線の新潟、東海道・山陽新幹線の静岡、大阪、神戸へは、フランスのTGVと同じように新幹線を利用できるだろう。
 北海道の札幌と九州の大分は、新幹線が通じていないので、いささか問題である。
 チームや役員は飛行機で移動できるが、サポーターや報道陣の大量輸送のためには、特別列車の計画が必要だと思う。 


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