ワールドカップのときには、世界中からいろいろな人が来るので、ホテルの確保は重要である。しかし、オリンピックと違って長期分散開催だから、対策の立てようは、それほど面倒ではない。フランス大会の経験を振り返って、宿泊対策のポイントをまとめてみた。
☆宿泊施設の種類
ワールドカップを開催するときに必要な宿泊施設は、大まかに分けて6種類ある。
第一は、参加チームとその関係者用である。これには2種類あって、一つはキャンプ地、もうひとつは試合会場地のホテルである。フランス大会の日本代表チームの場合は、キャンプ地はエクスレバンで、試合の前々日に会場地のツールーズ、ナントに、リヨンは前日に、それぞれ移動していた。
第二は、審判関係者用である。審判は厳正中立だからチームや他の競技役員とは別にする必要がある。ただし、地元と外国の区別はない。
第三は、競技役員用である。これはFIFAなどの外国人用と地元の役員用を分けて考えることができる。2002年の場合、開催都市の地元役員はタタミ部屋にザゴ寝だって平気だろう。いつもやっていることである。
第四は、報道関係者用である。テレビのスタッフやジャーナリストは、世界の至る所からやってきて多種多様である。人数も多い。これは特別に対策を考える必要がある。
第五は、観客用である。人数としては、これがもっとも多い。大きく分けて外国からくるサポーターと国内の他の地域からくるファンの2話類がある。外国からどれくらいの人数が来るかは、海外への入場券の割り当てとも関係がある。
第六は、VIP(非常に重要な人物)用である。一国の元首や大臣が夫人同伴でやってくる。人数は少ないが、扱いは難しい。
☆ベッド数の心配はない
こうやってみると、ワールドカップのホテル事情は、たいへんなことになりそうだが、実はそれほどのことはない。オリンピックに比べれば楽なものである。
オリンピック夏季大会は、一つの都市に世界の180くらいの国の選手団が集まり、40ほどのスポーツを2週間の間にいっせいに行なう超過密スケジュールである。宿泊対策はたいへんである。
ワールドカップの場合は、実施スポーツはサッカー1競技だけ、出場は32カ国だけ。それを1カ月かけて国内の多くの都市に分散して行なうのだから、ゆったりしている。
オリンピックより多いのは、観客数だろう。それも、外国や国内の他の都市から来るお客さんの割合が高い。これは宿泊対策を考えるときには重要なポイントである。報道関係者の数も、チーム数や試合数との割合を考えれば、非常に多い。
とはいえ、1日に1都市で行なわれる試合に関係する国は二つだけやある。対策はそれほど複雑ではない。
しかも、1試合に要する時間は前後を合わせても、せいぜい3〜4時間である。その町でホテルが取れなければ、別の町に宿泊して日帰りする時間の余裕が十分ある。名古屋から新幹線で横浜へ往復することもできるし、上越国境の水上温泉にのんびり滞在して浦和と新潟へ試合を目に行くことだって可能である。
というわけで、2002年ワールドカップのホテル事情は、ベッド数については、日本では、それほど心配する必要はないと思う。
☆柔軟な総合計画を
ワールドカップのホテル事情でカギになるのは、ベッド数よりも交通事情ではないだろうか。ベッドがあっても、ホテルから競技場までのアクセスが難しかったら意味がない。フランス大会のとき、パリに本拠を置いて、マルセイユやツールーズやリヨンへ行くときは、行く先ざきでホテルをとろうとしたのだが、これが、なかなか、たいへんだった。大会の公認旅行業者が斡旋してくれるホテルはスタジアムから何十キロも離れていて、ほとんど用をなさなかった。
大会が始まって10日ほどたってから、ようやく、現地で不便なホテルを探すよりは、夜行列車でパリヘ戻るほうが楽なことに気が付いた。フランスの新幹線のTGVが非常に便利で快適だと分かったからである。
端的に言えば、地図のうえの距離と現実に行動するための距離は別だということである。タクシーで近郊のホテルへ往復するよりも、新幹線でパリに戻るほうが、時間的には近くて安いのである。
2002年の会場都市を考えるとき、これは一つのポイントではないだろうか。
地図を広げて、競技場から何キロかにコンパスで円を描き、そのなかに、いくつのホテルがあり、いくつベッドがあるかを数えても、あまり意味はない。大量高速輸送機関である新幹線が通じているかどうかのほうが重要である。
2002年の準備にあたっては、そのあたりを柔軟に、総合的に考えるべきではないだろうか。 |