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サッカーマガジン 1998年8月26日号
ビバ!サッカー

W杯のホテル事情
−2002年に向けてA−

 ワールドカップ・フランス大会の取材で経験したことを、日韓共催の2002年に向けての参考資料として書き続けていきたい。前回、ホテル事情を取り上げたのに続いて、今回もホテル事情について続きを書くことにする。4年後に日本で同じことが起きないように…。

☆ワールドカップ旅行術
 フランスのワールドカップでは、パリの屋根の下に部屋を借りっ放しにして、そこを本拠地に動くことにした。しかし、試合はパリだけでなく地方の都市でもある。そこで地方に出る場合には、そのときだけ、その町のホテルをとることにした。
 しかし、そのホテルの予約がむずかしい。というのは試合当日には、お客さんが殺到するし、主要なホテルは大会公認の「モンディレーサ」というエージェントが、早くから押さえているからである。
 というようなことは、前回にも書いた。
 そこで実際には、どうしたか。
 まず、パリのメディアセンターのなかにある「モンディレーサ」に行って、ひょっとしてホテルがとれないか当だってみた。現実には、これはムダだった。行き先の市内のホテルはみな予約済みだった。空いているホテルは市内から200キロも離れているところで、そんな遠くに泊まるのならパリヘ戻ったほうがいい。
 次に、目的地の駅や空港に着いてから旅行案内所でベッドを探してみた。過去の大会では、これで、だいたいは解決していたのだが、フランス大会では、そうはいかなかった。案内所で扱うクラスのホテルは、みな満員だった。
 三つ目の手段は、とにかく、その町の競技場に行って、そこのプレスセンターのなかの公認エージェント「モンディレーサ」の窓口に頼んでみることだった。
 というように、ワールドカップ旅行術には、いろいろな方法がある。

☆モンディレーサの矛盾
 今回は、現地の競技場の公認エージェントの窓口で探すのが、もっとも成功率が高かった。ぼくの場合には100パーセントだった。
パリの窓口も現地の窓口も同じ公認エージェントの「モンディレーサ」である。だのに、パリではダメで、現地では見つかるのは奇妙である。
 思うに、これはコンピューター・システムのせいではないか。
 「モンディレーサ」が押さえていた部屋は大会前からの予約で、すでに満室になっている。だから「モンディレーサ」のコンピューター上では、全部予約済みなのである。町から非常に遠いところしか空いていない。 
 現地の窓口で頼むと、係員は地元の人である。その町の事情をよく知っている。そこでコンピューターで探す前に、適当なホテルに電話を掛けて直接、きいてくれる。そうすると意外なことに空き室がある。 
 コンピューター上では満室なのに直接電話すると空き室があるのは、どういうわけか? 一つの理由はキャンセルである。 
 「モンディレーサ」では、宿泊しなくても徴収した料金は返却しない契約をしていた。したがってホテルのほうは、お客さんからキャンセルの報せがあっても「モンディレーサ」には報せない。いずれにせよ、宿泊料は「モンディレーサ」から入ってくるからである。
  しかし部屋が空くことは分かっているから新しいお客さんに貸すことはできる。 
 電話で問い合わせると「空き室はあります」と答えるわけである。

☆ツールーズの体験
 コンピューター上では満室だのに直接、問い合わせると空き室がある。矛盾の原因は、もう一つある。
 それは、そのホテルが「モンディレーサ」に提供した部屋以外に、白分自身で留保した部屋を持っている場合である。「モンディレーサ」を通さないで直接、申し込むお得意さんに提供しようと用意していた部屋が空いているケースがある。
 このように「モンディレーサ」と契約しているホテルでも空き部屋が見つかることがあった。ただし、この場合でも、「モンディレーサ」の窓口を通して探した場合は、契約も「モンディレーサ」を通してするほかはなかった。
 現地の窓口の係員が、親切に直接ホテルに電話してくれたのだが、空き室を確認できると、あとはまたパリのコンピューター上に舞い戻る。したがって、大会前に「モンディレーサ」が取り決めた割高の料金である。最初にツールーズに行ったとき、この方法でツールーズの競技場に非常に近いところのホテルをとることができた。
 次にツールーズに行くときは「モンディレーサ」を通さずに、直接、そのホテルに電話してみた。それで、ちゃんと部屋をとることができた。日本対アルゼンチンの試合のときである。
 このとき空き室があったのは、例の幽霊入場券の事件で日本からのお客さんのキャンセルが出たためだろう。日本の旅行会社は「モンディレーサ」を通じて、来なかった日本のサポーターの料金を払い、同じ部屋の料金をぼくも払ったわけである。


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