6年目のJリーグがはじまった。世間の期待は、フランス・ワールドカップに出場する日本代表チームに集まっているけど、日本のサッカーの将来にとって、もっと重要なのは国内リーグが、よりよくなることである。1998年がJリーグ充実の年であってほしい。
☆関西勢への期待
新しいシーズンの開幕を、ぼくは万博競技場で迎えた。3月21日、ガンバ対セレッソの大阪ダービーだ。
午後2時からのベルマーレ対ヴェルディの試合を、兵庫県加古川市の自宅でテレビで見てから、山陽本線神戸線で大阪北部の吹田市にある千里丘陵のスタジアムに駆け付けた。茨木の駅を降りたあとバスを乗り間違えたためもあって、着いたときには、もうナイターの試合が始まっていたが、スタジアムのまわりはシーンとしている。「こりゃ会場を間違えたかな」と思ったくらいである。
しかし、入ってみると、スタンドはほぼ埋まり、両ゴール裏では双方のサポーターが声を張り上げ、歌をうたって応援していた。関東の首都圏周辺でアントラーズや日本代表の試合が行なわれるときのスタンドの熱狂には及ばないが、本当にサッカーの好きなお客さんが、スタンドを埋めるようになりつつある。
試合の内容も悪くなかった。スリリングな攻防で、終了3分前にセレッソが逆転の決勝ゴールをあげた。チームも、スタンドの雰囲気も、これから、どんどん良くなるだろう。
いま関西には、Jリーグのチームが四つある。北から京都のパープルサンガ、大阪のガンバとセレッソ、それに神戸のヴィッセルである。この4チームが、JRと私鉄で南北につながっていて、ホームの試合でもアウェーの試合でも、応援にいくのに便利である。サンガとセレッソが効果的な強化をしたから、今年の関西のJリーグは、好試合を期待できるだろうと思う。
☆日本人監督に期待
セレッソの監督は、松木安太郎である。いまのヴェルディの前身である読売サッカークラブで小学生のときから育ち、日本代表にもなった。
ぼくは、かつて新聞社に勤めていて読売サッカークラブには創設のときから、かかわっていたから、少年時代から松木監督を知っている。Jリーグ創設のときに、ヴェルディの監督になって優勝しながら、その後、テレビの解説者に転進して、タレントみたいになっていたが、また現場に舞い戻ってきたのはうれしい。旧友が初勝利の記者会見に現れたので、心のなかで祝意を表した。
Jリーグ・チームの監督は、一時は外国人ばかりだった。それはそれで悪くはなかった。いろいろな風が外から吹き込んできて、日本の古い企業スポーツで培われたやり方にしがみつこうとする傾向を吹き飛ばしてくれた。
しかし、日本人の監督も育ってほしい。日本のリーグだのに、指導者も主力選手も外国人頼みでは、おもしろくない。
今季のJリーグには、日本人の監督が6人いる。
柏レイソルの西野朗、浦和レッズの原博実、ベルマーレ平塚の植木繁晴、名古屋グランパスの田中孝司、セレッソ大阪の松木安太郎、アビスパ福岡の森孝慈である。
この6人に、それぞれ活躍してほしいと思う。
その中でもセレッソの松木監督はクラブ育ちで古い会社スポーツのシッポを引きずっていないはずだからもっとも期待している。
☆若手の活躍に期待
ナイターで行なわれた開幕戦の大阪ダービーを見に出掛ける前に、テレビでベルマーレ対ヴェルディの試合を見た。4対1でベルマーレの大勝。「ひょっとすると強いヴェルディが復活するかも」と予想していたのだが、大外れである。
ブラウン管で見たかぎりでは、ヴェルディは、ベルマーレの中田英寿に対して、特別の対策はとらなかったようである。
中田は人気上昇の逸材とはいえまだ21歳になったばかり。注目を集めはじめてから1年である。
日本代表の経験者を集め、これまでに輝かしい成績を残しているヴェルディとしては「なにを、こしゃくな、若造に特別の対策は必要ない」と、まともに攻めのサッカーを展開して押しつぶすつもりだったのかもしれない。
ところが中田が大活躍だった。
常に全体の状況を見ていて、一瞬のうちに判断し、一瞬のうちに反応し、一瞬のうちに行動する。そのすばやさが見事だった。ヴェルディの敗因は、自分たちの実績を過信して若手の急上昇を評価し損なったことではないか。
今季のJリーグには、期待の若手がたくさんいる。
アントラーズの柳沢敦は、開幕のアビスパとの試合でも、第2戦のコンサドーレとの試合でも、大事な得点にからんで連勝に貢献した。レッズの注目の新人、小野伸二も、期待どおりのデビューだった。
若手の活躍で新旧交代、ベテランはうかうかしていられないシーズンになるだろうと思う。
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