横浜と東京で行なわれたマールボロ・ダイナスティカップは、岡田監督の率いる日本代表チームのスタートを占う大会だった。優勝がどうのこうのということではない。岡田監督がどのようなチーム作りをめざしているか、どういう選手を起用しようとしているかがポイントだった。
☆韓国戦で気が楽に
ダイナスティカップで日本は、まず韓国に2対1で勝った。6月のワールドカップを目標にチーム作りを始めているのだから、3月の時点で勝ったからって、どうということはない。しかし初戦の勝利で岡田監督の気は軽くなったはずである。
この大会で、岡田監督は、いろいろ試してみたいことがある。
第一に、これまであまり出番のなかった選手を使って、国際試合でどれくらいやれるか見てみたい。
第二に、とくに若手を起用して国際試合の経験を少しでも積ませてやりたい。
第三に、それぞれのポジションで、いろいろなコンビを組ませて相性を見てみたい。
第四に、主力になる選手がケガをしたときを想定して代役の起用法も試してみたい。
第五に、いろいろな攻め方、守り方をやってみて、どれがチームに合っているかを試してみたい。
第六に…。
しかし、一方で制約もある。
試合数が少ないので、あれもこれも試みるのは不可能だが、それだけではない。
日本で開かれているから、テストだからといって勝敗を度外視することはできない。お客さんは勝つことを期待している。それに応えなくてはならない。とくに韓国は隣国のライバルだから、ファンが特別に注目している。
その試合に、まず勝つことができたので、岡田監督はほっとしただろうと思う。
☆GK楢崎の評価は?
新装の横浜国際総合競技場で3月1日に行なわれた韓国との試合では、ゴールキーパーに楢崎が起用された。これまで、ワールドカップ予選を通じて、ずっと川口が出場していたが、この機会に新しい人材をテストしたわけである。
ゴールキーパーはポジションが一つしかないから、大事な試合のときに新しい人材を使ってみるのは難しい。
しかし、ダイナスティカップは東アジアの国際大会ではあるが、タイトルとしては、まだ、それほど重要視されているわけではないから、ここは新人起用のいい機会だった。それに日本で開かれる韓国戦で観客は多いし、相手のプレーは激しい。川口より一つ若い21歳の楢崎に経験を積ませたのは適切である。楢崎はこれが公式国際試合2試合目ということだった。
前半18分に日本が先取点をあげ、その3分後に韓国がたちまち同点にした。右から速攻で攻め込みイ・サンユン(李相潤)がシュートしたのを楢崎が止めたように見えたが、手をかすめてゴールした。
雨がじゃぶじゃぶ降っていた。試合後の記者会見で岡田監督は「ボールが濡れていて滑ったのだろう」と楢崎をかばう発言をした。それはそうだろうが、楢崎は他の場面でも、飛び出しのタイミングを誤ったり、手で投げたボールが相手に渡ったりしている。ミスがいくつかあったので「みごとに及第」とはいえなかった。
雨は不運だったが、合格点をもらうには次のチャンスを待たなければならない。
☆城、中山の2トップ
試合は1対1のまま引き分けに終わりそうだったが、終了直前の後半44分に日本が決勝点をあげた。
日本の得点は2点ともコーナーキックからだった。名波の蹴ったボールを1点目は中山が、2点目は城が、どちらもヘディングで決めた。
この試合で最前線には中山と城が起用されていた。このポジションには、カズもいるし、岡野もいるし、呂比須もいる。どういう2トップを組むのかも注目の的だった。まず第1戦は、ベテランと若手の個性派コンビだったわけである。
この二人が、それぞれ1ゴールずつあげたのだから「めでたし、めでたし」である。試合後の記者会見では「コーナーキックからの得点だけだったが…」と、流れの中で組み立てたゴールがなかったのを、とがめる質問も出たが、そうそう欲張ることはない。韓国の守りが厳しかったのだから、セットプレーを生かすのが早道である。流れの中での組み立ては、これからの課題としよう。
守備の布陣は、井原と秋田を中央に置き、相馬と名良橋が両サイドでワールドカップ予選の時と同じラインだった。井原を中心にチームを作ろうという岡田監督の意図が、はっきり見えたように思う。
中盤は中田を軸に、いろいろ試みてみるつもりのようだった。中田は韓国の厳しいマークに苦しんでいたが、試合の終わりごろ、相手が疲れてきたら持ち味を発揮できるようになった。このあたりは、また改めて考えてみることにしよう。
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