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サッカーマガジン 1997年12月24日号
ビバ!サッカー

強化委員会を改革せよ

 日本代表チームの岡田武史監督は、自分自身の任務をワールドカップ・フランス大会までに限定した。また外国人のアドバイザーは不要だと断った。この岡田監督の決断を支持する。このさい協会の強化委員会を改革し、岡田監督がもっともやりやすい体制を作ってやってほしい。

☆外国人監督案の愚
 日本がフランスヘの出場権を得て岡田監督の人気が異常に沸騰しはじめたころ、そして岡田監督の続投を求める声が高くなりはじめたころ、ある大手出版社の週刊誌編集者から電話がかかってきた。
 「岡田監督にフランス大会を任せるのは、まだ早い。このさい、国際経験豊富で、手腕に定評のある外国人監督を起用して、岡田さんはコーチとして修業させたほうがいい。そういう線で特集を組みたいんですが……」
 「いかんながら」
 と、ぼくは答えた。 
 「わたしの考えは、そちらの特集の線とは反対です。お役に立てませんよ」 
 その週刊誌の編集者の考えは、岡田監督は、経験不足だから、ジーコかネルシーニョを日本代表の監督に起用すべきだということだった。 
 この考えには、ふたつの難点がある。
 ひとつは、あと半年しかない時点で、これまで岡田監督がコーチとして作りあげてきたチームの基礎をこわして、まったく新しいチームを作るのは無理だということである。 
 もうひとつは、外国人監督を迎えるのなら、その監督にすべてを任せるほかはないだろうということである。誰をコーチにするのかは、その外国人監督が決めるべきで、こちらの都合で岡田コーチを付けようとしたら、ベンチに不協和音がまじる。 
 日本サッカー協会は、外国人監督案には耳を傾けず、岡田監督の続投を決めた。これが正しい。

☆岡田監督の3条件
 岡田監督は、続投を引き受けるにあたって、次の三つのことを決断して条件とした。
@任期は翌年7月のワールドカップ終了まで。
A外国人のアドバイザー(顧問)やコーチはいらない。
Bオリンピック・チームは担当しない。 
 「さすがだ」と思う。自分のなすべき任務を心得ている。コーチとして加茂監督に協力して作ってきたチームを基礎に、フランスで成果をあげることに専念してもらいたい。
 この三つの条件は、誰が考えても当然だと、ぼくは思っていたのだが、そうでもないらしい。 
 任期については、日本サッカー協会が、2002年の日韓共同開催のワールドカップまでやってもらいたいと要請した、という記事があった。
 「そんなバカな」と思う。 
 2002年の体制は、フランス大会が終わってから決めればいい。あわてる必要はない。 
 外国人のアドバイザーを付ける案は、強化委員会で出て、岡田監督が断ったという話である。 
 監督には、そのチームについては全権を委ねるべきであって、どんなコーチが必要かは岡田監督が決めることである。 
 オリンピック・チームを引き受けなかったのも当然である。フランス大会まで半年しかないのに、余分な仕事を引き受ける時間の余裕はないはずである。 
 これも、協会の側が要請して、岡田監督が断ったという報道だった。

☆支援と監査を分けよう
 こういうような新聞報道を読むと、日本サッカー協会の首脳部、あるいは強化委員会の考え方には、ボタンを掛け違えたところが、いろいろあるのではないかと思う。
 ボタンの掛け違いのひとつは「強化委員会の在り方」である。
 大仁邦彌委員長の現委員会は、予選の最中に、相手チームを偵察して加茂監督に情報を提供する支援活動をした。
 一方で、加茂監督の指導ぶりを観察し評価して、それを協会首脳部に報告する仕事もやっていたらしい。 
 これは、2年前の加藤久委員長のときにもあったことで、加藤委員会は、オリンピック・チー厶を含めて、支援活動にすばらしい成果をあげながら、加茂監督のチーム作りを評価して、加茂監督に代えてネルシーニョ起用を進言し、それが理事会で引っ繰り返されて分解した。 
 チームを支援するのも、監督を評価するのも、どちらも必要なことである。 
 しかし、それを同じ委員会がやるのは、どうだろうか。 
 手伝ってくれているような顔をしながら、陰では足を引っ張っているのと同じことにならないだろうか。 
 強化委員会はチーム支援を任務とし、代表チームの監督と一心同体で仕事をすべきだと思う。代表チームの成績が悪かったら委員会にも責任がある。 
 成績の評価は、別の少人数のグループが行なうべきである。これは協会首脳部への助言と勧告が任務で、むやみに外部と接触すべきではない。    


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