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サッカーマガジン 1997年12月3日号
ビバ!サッカー

岡田監督と4DF

 波乱万丈、浮いたり、沈んだり、燃え上がったりの1カ月半だった。ワールドカップのアジア最終予選、フランスへの道は見えては隠れ、また見えてきた。監督交代の結果、日本代表チームは、どう変わったのだろうか? ショック療法は成功だったのだろうか?

☆イラン戦が正念場
 川の半ばで船頭を代えたというか、相当に無謀な賭けで岡田武史監督が誕生した。そのあと2引き分け。やっぱりダメかと思ったら韓国とカザフスタンに連勝し、ライバルのUAE(アラブ首長国連邦)のつまずきもあってB組2位は確保した。順位は実力どおりといっていい。
 「実力どおりなら日本が1位になるはずだ」という意見もあるだろう。選手たちの一人ひとりの技術と戦術能力は日本が上だという見方も成り立つからである。
 しかしチームの力は、監督やフロントの力を含めてのものである。代表チームの場合は、サッカー協会の支援体制も含めての話になる。韓国に一歩を譲ったきっかけは、東京での日韓戦で韓国の車範根監督の作戦が、日本の加茂周監督のチーム作りの弱点をついたところにあった。だから、今回の予選に関しては、日本は韓国に総合的な実力で一歩を譲ったというほかはない。
 そのあと、コーチから昇格した岡田監督は、ソウルで韓国に勝ち、さらにホームでのカザフスタン戦にも勝った。だから岡田監督の実力が上かといえば、そうともいえない。韓国もカザフスタンも「絶対に勝たなければならない」という立場にはなかったからである。
  岡田監督自身が言っていたように「勝因にはいろいろな要素があり、モチベーションが違ったのも、その一つだった」からである。
  岡田監督の真価が問われたのは、一発勝負ではあるが、A組2位のイランとの決戦である。

☆守備ラインの人数
 とはいえ、岡田監督になってチームは変わった。それが韓国とカザフスタンに連勝する原因になった。変わった点は、いろいろあるが、目に見えて変わったのは守備ラインの構成である。
 加茂監督のときは、いわゆる3−5−2のシステムだった。
 守備ラインに、まず3人のディフェンダーがいる。相手の2トップに対してマンツーマンで2人のディフェンダーがマークし、そのカバー役としてスイーパーがいる。今回の日本代表ではスイーパーは井原である。
 実際には、守備ラインの両翼にはそれぞれ1人ずつのディフェンダーがいる。しかし、相手が2トップの場合には、両翼の守備ラインでマークすべき敵はいないので、多くの時間帯は中盤に進出している。そこでこの2人を本来のミッドフィルダー3人に加えて中盤プレーヤー5人と数えている。トップは2人だからラインを後ろから数えて3−5−2と呼ぶわけである。
 加茂監督が使っていたこのシステムを岡田監督は4−4−2に変えた。守備ラインはスイーパーを置かないでゾーンで守って4人、中盤が4人、トップが2人である。
 数字による表現では、守備ラインの人数が増えて中盤が減ったように見える。しかし実際は違う。中盤で主としてプレーするプレーヤーは3人から4人に増えている。
 3−5−2という表現は実際には適当でないので、両翼のプレーヤーを守備ラインに勘定して5−3−2と表現してもいい。

☆ダイヤ型の中盤
 岡田監督は4−4−2のシステムを採用し中盤を4人にした。この4人はダイヤ型(菱形)に布陣した。
 ダイヤのトップには北沢が起用された。中盤から進出して最前線の2トップにからむ役割である。
 菱形の両サイドは中田と名波である。ここが攻めの起点となる。
 ダイヤの最後尾の「中盤の底」には山口が起用された。敵の攻めを食い止め、攻めでは守備ラインの両翼のプレーヤーが攻め上がったときに守備ラインにカバーに入る。
 韓国とカザフスタンに連勝した試合では、このシステムが成功した。 
 菱形のトップの北沢が前線に押し込む。そのあとにできたスペースに名波が進出する。フリーの名波にボールが渡ろうとするやいなや、左サイドバックの相馬が前線へ走り出る。名波から相馬にパスが出て、相馬のセンタリングがゴール前に上がる。加茂監督のときの3−5−2では実質的な中盤は3人だったのに対して、岡田監督の4−4−2では中盤は4人である。中盤が1人増えたので名波がフリーでボールを受けるチャンスが多くなった。そのために名波−相馬の攻めが成功した。
 もちろん、韓国もカザフスタンも日本の戦法の変化に対策を工夫することはできたはずである。
 しかし、韓国はすでにフランスへの切符を手にしていたし、カザフスタンは逆に可能性がなくなっていた。だから特別な作戦で日本を封じ込める必要はなかった。すなおに、まともに戦えばよかった。「モチベーションの違い」とは、このことである。


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